レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、17日に数千台のポケットベルが一斉爆発する数時間前までメンバーに「ゴールド・アポロ」ブランドの新しいポケベルを配布していたと、2人の治安情報筋が明らかにした。18日撮影(2024年 ロイター/Ann Wang)

レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、17日に数千台のポケットベルが一斉爆発する数時間前までメンバーに「ゴールド・アポロ」ブランドの新しいポケベルを配布していたと、2人の治安情報筋が明らかにした。これはポケベルに関してヒズボラが安全だと確信していたことを示している。

ヒズボラのメンバーの1人が16日に新しいポケベルを受け取り、翌日箱に入ったまま爆発したと、情報筋の1人は語った。2人目の情報筋によると、数日前に幹部に渡されたポケベルも爆発し、その部下が負傷したという。


ポケベルの一斉爆発の翌18日には、ヒズボラが持つ無線機(トランシーバー)数百台が爆発した。レバノンとヒズボラは、一斉爆発の背後にはイスラエルがいるとみている。イスラエルの秘密軍事情報部隊が計画に関与していたと、西側諸国の安全保障筋がロイターに語った。イスラエルはその後、レバノンへの空爆を強化しているが、関与の有無を明らかにしていない。

トランシーバーの電池にはPETNと呼ばれる爆発性の高い化合物が混入されていたと、この装置の部品に詳しい別のレバノンの情報筋が20日にロイターに語った。ロイターは今週初め、ポケベルに隠された最大3グラムの爆発物をヒズボラが数カ月間にわたり検出できなかったと報じた。

治安当局の情報筋の1人は、爆発物の検出は非常に困難だったと述べた。ヒズボラは2022年からポケベルがレバノンに届けられた後、警報が鳴らないかどうか空港を巡回するなどして検査していたと、さらに2人の情報筋がロイターに語った。ロイターは爆発装置の詳細に詳しい合計6人の情報筋から証言を得た。治安筋の1人によると、この検査はポケベルに対する特定の疑いではなく、爆発物や監視装置が仕掛けられていないかの機器の定期検査の一環で行われたという。

ヒズボラのハッサン・ナスララ事務総長は19日のテレビ演説で、連続爆発はヒズボラに対して「前例のない」ものだと述べた。

台湾のゴールド・アポロは、攻撃に使用されたポケベルは自社製ではなく、使用ライセンスを持つ欧州企業が製造したと述べた。ロイターは、ポケベルの製造元や、いつ爆発物が仕掛けられたかなどを突き止められていない。

5000台のポケベルは今年初めにレバノンに持ち込まれた。ロイターは以前、空爆で標的となった上級司令官が殺害された後、ヒズボラがポケベルを利用することでイスラエルによる携帯電話の監視から逃れようとしていると報じていた。ヒズボラとイスラエルの対立はこの1年間、パレスチナ自治区ガザへの攻撃と並行して激化し、本格的な地域戦争への懸念が高まっている。

17日のポケベル爆発後、ヒズボラは他の機器の安全性にも疑念を持ったと、治安筋2人と諜報筋1人がロイターに語った。ヒズボラは全ての通信機器の検査に着手したほか、ポケベルが持ち込まれた経路の調査も開始したと治安筋2人は語った。ただ、18日午後までに調査は完了していなかったという。ヒズボラは、イスラエルがトランシーバーを爆破したのは、ヒズボラが仕掛けられた爆発物にすぐに気付くと考えたためだと、関係者1人がロイター通信に語った。

レバノン保健省によると、トランシーバーの爆発により25人が死亡、少なくとも650人が負傷した。12人が死亡、3000人近くが負傷したポケベル爆発と比べ、高い死亡率となっている。

[ロイター]


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