韓国の非常戒厳を巡り、野党6党が4日に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領への弾劾訴追案を国会に提出し、7日にも採決される見通しだといいます。
■尹大統領の今後は?
尹大統領に対し… この記事の写真4日夜、非常戒厳を出した尹大統領に対し野党・祖国革新党のチョ・グク代表は「尹氏の行動は刑法87条の『内乱』罪にあたる」と断じました。チョ代表は自身の疑惑で、検事総長時代の尹氏に追及された人物です。
また「尹大統領自身がまさに反国家勢力だ」と非難。「内乱罪の現行犯で逮捕しなければならない」と主張しました。この内乱罪は現職大統領の起訴、処罰が唯一可能な法律で、刑罰は5年以上の懲役または死刑、無期懲役が科されます。
中央日報によると、高麗大学ロースクールのキム・ソンテク教授は「盧泰愚(ノ・テウ)元大統領などの内乱陰謀罪裁判の時も、国会議員登院を邪魔して内乱罪が成立すると最高裁から出たことがある」とし、尹大統領も刑事訴訟の対象になる場合があると指摘しています。
野党6党は弾劾訴追案を国会に提出また、弾劾(だんがい)手続きが進む可能性も高くなっているといいます。4日、韓国の最大野党「共に民主党」など野党6党は弾劾訴追案を国会に提出しました。
尹大統領の非常戒厳宣言が憲法違反だと指摘していて、7日に採決の見通しです。弾劾訴追案の発議には在籍議員(定数300)の過半数、可決には3分の2以上(200議席以上)の賛成が必要になります。
最大野党「共に民主党」と、仮に諸派の22人が弾劾に賛成した場合は192人となり、与党「国民の力」の8人が賛成に回れば法案は可決することになります。
今回の戒厳令解除を巡り、与党議員18人も賛成に回ったことから可決の可能性が高いとの見方もありました。
もし、弾劾が可決されたらどうなるのか?大統領の職務は停止され、首相が職務を代行することになり、180日以内に憲法裁判所が弾劾の可否を判断することになります。
一方で、5日の連合ニュースによると、与党「国民の力」は議員総会を開き、党の方針として尹氏の弾劾に反対する方針を決定したと報じています。
野党、国民からも辞任圧力が強まる韓国の行政も混乱しています。韓国の大統領府高官や閣僚の全員が大統領に辞意を表明したといいます。尹大統領に対し、野党、そして国民からも辞任圧力が強まっており、自ら辞任する可能性も指摘されています。
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■蜜月関係から猛烈批判に「廃虚国」■蜜月関係から猛烈批判に「廃虚国」
北朝鮮は前の文在寅政権とは関係が良好でした。
文政権とは関係が良好2018年4月、南北の軍事境界線となる板門店(パンムンジョム)で歴史的な南北首脳会談が行われました。金正恩総書記が軍事境界線を超えて韓国入り。これは北朝鮮の最高指導者として史上初めてのことでした。この時「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」に合意しました。
そして、同じ年9月には、平壌に文大統領が訪朝し、南北首脳会談が行われました。この時は両首脳が白頭山(ペクトゥサン)に登頂し、平壌冷麺を一緒に楽しみました。
尹政権では関係が悪化尹政権では、北朝鮮との関係が悪化していました。2022年5月に尹政権が誕生すると、翌年1月、北朝鮮の指令で反政府活動を行った疑いで、労働組合の全国組織「民主労総」本部などに強制捜査を行いました。
一方、北朝鮮も去年12月、金総書記は「北南関係はもはや同族関係ではない。敵対する2つの国家関係だ」と断絶宣言を行ったとみられています。そして今年10月に憲法を改正し、韓国を「敵対国家」と規定し、祖国統一などの表現も削除したとみられています。
さらに北朝鮮メディアによると、今月には「対敵研究院」(韓国を敵視する政策に基づき新設された北朝鮮の政府機関とみられる)が、尹政権を批判する白書を発表しました。そこには「尹氏は生まれながらの無知と無能さで大韓民国を『廃墟国』に変えた」「尹氏の妻が政治への介入と不正蓄財を繰り返している」などとしました。
そして、尹大統領側の説明では、今回の事態にも北朝鮮の脅威が関係していたといいます。
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■韓国市民の意識変化?■韓国市民の意識変化?
今回の事態に北朝鮮が関係?尹大統領は3日夜、「北朝鮮に従う勢力を清算し、憲法の秩序を守るため非常戒厳を宣言する」と表明しました。一夜で非常戒厳は解除されましたが、朝鮮半島情勢を中心に東アジアの国際政治を研究している、慶応義塾大学・西野純也教授は「北朝鮮は今回、尹大統領の失態を喜んでいると思う」と指摘しています。
韓国の「民主平和統一諮問会議」が今年9月に行った世論調査では、「南北統一が必要か?」という質問に「非常に必要だ」37.5%、「ある程度必要だ」37.1%と、統一が必要だとの回答が74.6%と4人に3人が統一を望むという結果になりました。
これは、関係のよかった2018年の南北首脳会談時に並ぶ結果だといいます。
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■日米韓連携に影響は?■日米韓連携に影響は?
トランプ前政権では…韓国の政界が揺れることで、今後日米韓3カ国の連携にも大きな影響が出てきます
トランプ次期大統領は、政権1期目の2018年6月、現職大統領としては初めて金総書記と首脳会談を行い、2019年には北朝鮮の軍事境界線を超えました。
一方で、韓国には、2018年「軍事演習は非常に高額だ」と訴え、米韓合同軍事演習は中止し、将来的な在韓米軍撤退を示唆しました。その後、米軍駐留経費の大幅増を要求しました。
こうした中、バイデン政権では、日米韓の連携を強化してきました。
バイデン政権、日米韓の連携を強化去年4月、尹大統領は訪米。バイデン大統領は12年ぶりに尹大統領を国賓として招きました。
石破総理と尹大統領も、10月・ASEAN首脳会議のラオス、11月・APEC首脳会議のペルーで2度の日韓首脳会談を行いました。
そして、先月15日には、日米韓首脳会談を行い、日米韓調整事務局を設置することで合意し、ソウルで初会合も開きました。
今回の問題を受け、連携に影響はあるのでしょうか?
日米韓の連携に影響は?連合ニュースによると、アメリカの核戦力の運用などについて米韓政府が話し合う「核協議グループ」の会合はワシントンで4日から開催予定でしたが延期されました。
中谷防衛大臣は、今月下旬、訪韓予定でしたが、延期する方向に。また、石破総理も、来月、訪韓で調整していましたが難しい状況だといいます
こうした事態に、河野克俊元自衛隊統合幕僚長は「日米韓の安保体制にも影響する」とし、「韓国の大統領が変われば三国で築いてきたネットワークはいったん弱まる。日本としては対北朝鮮政策で負担が増えるのは間違いない」と指摘しています。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年12月5日放送分より)
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