日本にある企業の99%を占める中小企業で今、後継者不足が問題となっています。そこで注目されているのが第三者に事業を引き継ぐ「M&A」です。地域の雇用や技術を次の世代に残すために、県内でもM&Aによる事業承継が広がっています。

住宅用資材などを扱う丸栄工業です。本社は東京ですが、名取市に支店があります。

丸栄工業 大沼正男顧問(東北機装販売の元社長)
「こちらが東北機装販売の営業部の空調とか建築、シール材関係の倉庫になっています」

顧問の大沼正男さん(74)は2年前まで、丸栄工業が買収した東北機装販売で社長を務めていました。中学卒業後、空調部材を扱う会社に就職した大沼さん。若さと勢いを武器に飛び込み営業を重ね、顧客との信頼関係を作り48歳で社長に就任しました。

丸栄工業 大沼正男顧問(東北機装販売の元社長)
「足しげく通って手や顔中に汗たらしながらお客さんに接したというのが理解してもらったのかなと思いますね」

年商は2億円ほどで従業員は約10人。借金も無く経営は順調でしたが、70歳前に大沼さんがぶつかったのが「後継者」の壁でした。

丸栄工業 大沼正男顧問(東北機装販売の元社長)
「どういうふうにして会社を存続させようか、後継者をどうしていくかというのは常に頭の中にありました」

後継者の不在に悩む県内企業は多く、去年、民間の調査会社が行ったアンケートでは、県内の企業の6割が「後継者がいない」と回答しました。また、中小企業庁のまとめでは去年、全国で廃業した企業のうち3割が「後継者の不在」を理由に挙げていて、事業を引き継いでいく難しさが浮き彫りとなっています。

中小企業は一般的に経営者の家族や親族か、従業員の中から後継者を選びます。しかし、どちらにも候補者がいない場合、M&A、企業の合併や買収によって第三者に経営を引き継ぎ、事業を続けることもできます。

M&Aの専門家は、雇用や技術を守るためにも事業を引き継ぐ重要性を強調します。

日本M&Aセンター 柴田彰執行役員
「その会社しか持っていないきらりと光る強みが必ずあるんですよね。経営者が高齢化してきている。跡継ぎがいない。それだけで、それだけの理由で会社を畳みますというのは、日本の文化や財産が失われていくという話になります」

大沼さんが最終的に選んだのは、M&Aでした。大沼さんは従業員の待遇や雇用の維持などの条件をもとに、M&Aを仲介する企業や行政に相談。面談を経て最終的に買い手として決まったのが、東京に本社を置く丸栄工業でした。

丸栄工業東北支店 横田憲司支店長
「私どもはエクステリア販売を中心とした卸売りの会社だったんですが、そこにシーリング材、または外壁の補修部材、さらには冷媒ガスなどの我々が今まで扱ったことのない商材を扱えるようになりましたので、お互いに良い効果が出てすごくやりやすい環境になったと思います」

買い手としては販路を拡大でき、売り手としては雇用を維持し、取引先への影響を最小限に抑えるメリットがありました。

丸栄工業 大沼正男顧問(東北機装販売の元社長)
「スムーズに引き継いでもらっているので、そういう意味では安心していられますね。いつでも身を引くことができると思います」

中小企業白書によりますと、全国の経営者の平均年齢は去年、60.5歳となり、過去最高を更新しました。第三者が事業を引き継ぐM&Aは一般的に数年かかるといいます。専門家も判断できる余裕があるうちに、雇用と技術を次の世代にどう残していくのか、考えておくべきだとしています。

日本M&Aセンター 柴田彰執行役員
「今、いろんなところが相談窓口になっています。会計事務所とか税理士さんとかあるいは地域の金融機関、信金さんとか証券会社もやっています。いろいろ誤解していたものがクリアになったりとかネガティブだと思っていたのが、実はそんなことないというのがわかったりしますし、当然逆もあるかもしれませんが、正しく知るということが何より大事かなと思います」

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