(ブルームバーグ):米国株の急落を受けて、ウォール街屈指の弱気派は正当性が証明されたと感じており、景気減速によるリスクへの警告をさらに強めている。

昨年まで悲観的な予測で際立っていたモルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏は、投資家は経済成長について暗い見方に傾いていると指摘。先週のデータは一部の市場参加者が抱いていた「ソフトランディング(軟着陸)の見方に疑問を投げかけるものだった」とリポートに記した。

「要するに、今年に入って個人消費は弱まっている」とウィルソン氏は説明。「株式のリスクリワードはおおむね不利な状況が続いている。現段階では、業績見通しの修正が決定的な形で好転しなければ、多くの銘柄が割安だと論じるのは難しい」と述べた。

米国株は8月に入ってテクノロジー株を中心に下落。米利下げがあまりにも遅過ぎて、リセッション(景気後退)を防げないと投資家が懸念しているためだ。先週公表された経済指標では、製造業活動の落ち込みと予想以上の雇用減速が示された。

2022年に弱気な見方が的中したウィルソン氏は、昨年に自身の予想が現実のものとならず、今年はS&P500種株価指数に関する予想を控えてきた。来年半ばの同株価指数については楽観的な見方に転じていた。

一方、JPモルガン・チェースのストラテジーチームは、今年最後に残っている弱気派の一角だ。ストラテジストのミスラフ・マテイカ氏は5日、企業活動の低迷や債券利回りの低下、業績見通しの悪化を背景に、株価は圧力を受け続けると予想。

マテイカ氏はこうした背景について「期待されていた 『回復 』のようには見受けられない」と指摘。「『悪いことは悪いこと』という局面が到来することを見込んで、株式には慎重な姿勢を崩さない」と付け加えた。株価は今年、弱めのデータが米利下げを促すとの見方から上昇する傾向にあった。

同チームはS&P500種の年末目標を4200としており、ブルームバーグが追跡するストラテジスト予想の中で最も低く、2日の終値からさらに21%の下落を示唆する。

ただ、この見方はJPモルガンのトレーディングデスクとは対照的だ。トレーディングデスクでポジショニングインテリジェンスの責任者を務めるジョン・シュレーゲル氏は、テクノロジーセクターから資金を引き揚げるローテーションは「ほぼ終了した」とし、押し目で買いを入れる戦術的なチャンスに「近づいている」と述べた。

米国株の売りは世界の株式市場も巻き込んでいる。こうした背景から、マテイカ、ウィルソン両氏はディフェンシブセクターが景気変動の影響を受けやすいシクリカルをアウトパフォームすると予想している。

「株式投資家にとって真の疑問は、企業が現在織り込まれているものを実現できるかどうかだ。すなわち業績の伸び加速で、この先何年にもわたって拡大が続くということだ」とウィルソンは指摘。「この点については、懐疑的な見方を維持している」と記した。

原題:Wall Street’s Bears Warn on Economic Growth Risks to Stocks (1)(抜粋)

--取材協力:Natalia Kniazhevich.

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