腕を骨折してギプスをつけていても「車の運転は大丈夫だろう」と思い込み、ついハンドルを握ってしまう人もいるかもしれません。しかし、結論から言うと、状況によっては交通違反になってしまう可能性があります。

骨折で腕を固定、車の運転は違反?

先日、筆者の同僚が足を滑らせて転倒し、左肩を骨折。ギプスはつけていませんが、三角巾で腕を固定している状態です。「運転できないので通勤が不便」と肩を落としていました。利き腕ではないし、運転できるのでは?と一瞬そう思いましたが、調べた結果、意外な事実が分かりました。

まず、道路交通法には『骨折している人が車を運転してはいけない』と具体的には明記されていません。しかし、腕をギプスや三角巾で固定した状態で運転した場合、道路交通法第70条に定められている安全運転義務に違反する可能性があると、交通事故に詳しい深田茂人弁護士は指摘します。

<道路交通法第70条>
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、 交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない

深田茂人弁護士

深田弁護士:
「腕にギプスをつけていても、ハンドル操作を的確に行うことができれば、ただちに違反になるとは言い切れません。片手運転の場合、ハンドルを握っていない方の手が何をしているかが問題です。飲食など不要不急の片手運転に比べれば、ギプスをつけた運転の方が許容される余地はあると考えられます。なぜなら、道路交通法は、交通の安全だけでなく、交通の利便性を図ることも目的としているからです」

「安全運転義務は抽象的なので、どのような片手運転が違反にあたるかの判断は難しいです。そのため、警察官が、ギプスをつけた状態で運転しているドライバーを発見しても、即座に違反切符を切るケースは少ないでしょう」

「とはいえ、繁雑な交差点での走行であったり、高速度での走行であったりすると、場合によっては、片手での運転ではハンドル操作を的確に行えないと判断され、安全運転義務違反に問われる可能性があります。このように状況によっては、違反となる可能性がありますし、やはり危険ですから、ギプスをつけた状態での運転は控えるべきです」

安全運転義務違反となった場合、違反点数は2点、反則金は大型車が1万2000円、普通自動車が9000円、二輪車が7000円、原付が6000円となります。

左足を骨折、AT車なら運転は可能?

では、足を骨折した場合は違反になるのでしょうか。国内で主流のAT(オートマチック)車は、通常右足だけでアクセルやブレーキを操作します。左足を骨折してギプスをつけていても問題ないように思われますが、弁護士の見解は?

深田弁護士:
「AT車であれば、左足を骨折しギプスで固定していても運転に支障がなければ、違反には該当しないでしょう。右足を骨折した場合は、さすがにアクセルやブレーキの操作が不安定となり、安全運転義務違反となる可能性が高いです」

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一方、ギプスをつけたまま運転し、もし事故を起こした場合、過失割合や刑事処分に影響が出る可能性があるといいます。

深田弁護士:
「ギプスをしていたことが原因でハンドルやブレーキ操作に支障が生じた結果、事故となった場合は、過失の割合が変わることがあります。また、相手を死傷させた場合は、過失運転致死傷罪が適用される可能性があります。ギプスでの運転が明らかになれば、起訴、不起訴を決める際に不利な判断材料になったり、有罪となった場合に量刑が重くなったりすることもありえます」

手や足を骨折し、ギプスをつけたままの運転は、安定した操作が難しく、緊急時の回避が遅れるなど、重大なリスクを伴います。安全を最優先に考えて骨折の完治に専念し、車の運転は控えることが賢明です。

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