岩手県遠野市の菓子店が作る、今が収穫時期の山ぶどうを使った菓子がSNSで話題です。見る人の心を打ったのは84歳の職人が家族と守り続ける味と技でした。

遠野市中央通りに店を構える、まつだ松林堂。
1868年=明治元年創業の老舗菓子店です。
店内には米粉とごま、くるみを使って作る名物「明がらす」など地域で昔から愛される菓子が並びます。

今回、紹介するのはこちら紫色が鮮やかな「ぶどう飴」。


どんなお菓子なのか、4代目で菓子職人でもある松田勝夫さんと妻の和子さんに聞きました。

(松田和子さん)
「山ぶどうの果汁をたっぷり使った和風のゼリーのような感じです。今でいうグミの柔らかい感じでしょうか」

固形のあめや液状の水あめとも違う独特な食感が特徴のぶどう飴。実は今、品薄になるほど人気の商品なんです。

(松田勝夫さん)
「私は別にね~。あたりまえに作っているものだから」

昭和25年ごろに販売が始まったとされるぶどう飴が話題になったきっかけはSNSでした。

2022年始めた店のインスタグラムに、84歳の勝夫さんがぶどう飴のあくを取る動画を家族が載せたところ、なんと700万回を超える再生回数を記録!
問い合わせやオンラインでの注文が増え一気に増えたといいます。
現在は製造が追いつかず、いったんオンライン注文を停止するほどの人気ぶりです。


菓子の製造は、まだ夜が明けきらない早朝に始まります。
工場に立つのは勝夫さんと息子で5代目の惠市さんです。


ぶどう飴の材料は水あめに砂糖、寒天と実にシンプル。
灯油バーナーで火をつける窯や単位が「匁」の秤など、製造に使う道具からは菓子づくりの歴史が感じられます。


一方で、息子の惠市さんは勝夫さんから「このくらい」と教わった量や温度を数値化するためタイマーや温度計も使っています。

(惠市さん)
「だいたいの量はあるんでしょうけど、それをちゃんと数字で残しておかないと後でつながらないので」

こうした工夫を重ねながら菓子づくりの歴史や技術が受け継がれています。

煮詰めた水飴に混ぜるのは遠野市内で収穫された山ぶどうを絞った原液です。

今年の遠野の山ぶどうは豊作で、収穫には勝夫さんを始めとしたまつだ松林堂のスタッフも参加しました。


あく取りは固まる前に終えるため素早く、丁寧に行われます。
半世紀以上続けてきた職人がまるで絵を書くようにヘラを滑らせる姿に、インスタグラムを見た人たちからは技術に感動するといった声が寄せられました。


一日寝かせたぶどう飴は1センチ幅にカット、その後、10日間乾燥させ、出来上がりです。
特別に乾燥前の切りたてをいただきました。

(甲斐谷キャスターリポート)
「ぶどう味の寒天という感じで、飴の感じは強くないです。でもおいしい!」

1日に作れる数はおよそ400個。
他の菓子の製造もあるため、毎日作ることはできませんが、勝夫さんは家族と協力しながら今も手間と時間をかけてぶどう飴を作っています。

(松田勝夫さん)
「自分で山に行って(山ぶどうを)採ってつぶしてジュースにしてやっていたものです。外に任せる部分も出てくるようになったからその分楽にはなりました。年だから楽にしてもらっているのかな」

誕生から70年余り。ぶどう飴を作る熟練の技は、見るものを感動させ今も新しいファンを増やし続けています。

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