国指定天然記念物のヤンバルクイナなど固有種が多く生息する、やんばるの森。この森から駆除する取り組みが長年続けられているのが、「マングース」だ。
ハブや野ネズミ退治のため、1910年に沖縄本島に持ち込まれたマングース。
繁殖し、結果的にやんばる特有の生態系を乱す結果を招いたことはよく知られている。県や環境省は、2000年代からマングースの捕獲に連携して取り組んでいる。
▼環境省 やんばる自然保護官事務所 椎野風香さん
「県のほうで、マングースが南から北側に侵入してこないように北上防止柵を3つ設置していただいていて、その最も北側の柵が「SFライン」と呼ばれる塩屋湾と福地ダムを結んでいる柵。そこから北側のエリアで2026年度までにマングースを完全に排除することを目標に事業を実施しています」
やんばる森を中心とする本島北部の重点地区で、最も捕獲数の多かったのは2007年度の619頭。当時と比べると最新の捕獲実績は10分の1程度となっていて、マングースは順調に減っていると考えられている。
それに一役買っているのが、マングース探索犬だ。
ハンドラーとペアで活動するマングース探索犬には、2種類がいる。テリアなどがマングースを見つけて追跡し居場所を特定する「生体探索犬」。
そして、シェパードやラブラドールなどがマングースのフンを探す「フン探索犬」だ。今回取材班は、フン探索犬のペアに同行させてもらった。
環境省から委託を受けている南西環境研究所所属の探索犬、龍神丸(りゅうじんまる)とハンドラーの上間慎矢さんはペアを組んで4年。慣れた足取りで山に入っていく。
▼ハンドラー 上間慎矢さん
「フンがあったときは、場所を絞っていき、絞ったらこっちを見て伏せる(ように訓練されている)。探索は週3回、月・水・金とか」
ぴったりと息の合った龍神丸と上間さん。雨でぬかるんだ道にもかまうことなく調査を進めていく。しかし、マングースのフンは簡単に見つかるものではなく、探索は長時間に及ぶ。
「日々の探索でマングースのフンを見つけることが少ないので、見つからないことが多いので、犬のモチベーションを崩さないために、(フンを)まいて、見つけたら遊びモチベーションを保つということをしている」
探索を進めていくと、マングース駆除の課題となっている場面に出くわした。
▼ハンドラー 上間慎矢さん
「イノシシに蹴飛ばされ、蹴散らされた筒ワナですね。元々はアンカーピンで、T字で繋がって動かなくなっているが、イノシシが餌をとるため外してバラバラにし被害を受けている」
鹿児島県・奄美大島では今月マングースの根絶を発表しましたが、沖縄ではリュウキュウイノシシの行動が駆除に悪影響を与えている。
▼環境省 やんばる自然保護官事務所 椎野風香さん
「イノシシが干渉してくる被害は奄美ではほとんどなかった。そこは大きい。日々の捕獲作業は奄美大島と連携しながらやっていて、使うワナの種類と、探索犬を使っているところは同じですね」
特有の問題がある沖縄だからこそ、マングース探索犬は不可欠な存在だ。
探索犬による捕獲数は2022年で18頭。前年から倍以上に増え、全体の捕獲数の3割以上を占める。数字上でも役割の重要性が高まっていることが分かる。
やんばるの森の生態系を守るため、犬と人が協力して行うマングースの防除活動は、「陸の豊かさも守ろう」というSDGsの目標に繋がっている。
▼環境省 やんばる自然保護官事務所 椎野風香さん
「普段この作業をしてないときは普通のかわいいワンちゃんたち。この子たちが森の中で駆けまわって活躍してくれてるのはすごいことだと思います。ワンちゃんたちのマングース事業に対する貢献度はすごく大きい。これからも頑張ってほしい」
▼ハンドラー 上間慎矢さん
「フンを見つける仕事でマングースの捕獲に貢献していければ、結果的にヤンバルクイナだったり、希少種の回復にも一役買えればいいな」
やんばるの生態系、豊かな自然を守るために、地道な探索活動が続けられています。(取材 愛久澤力也 SDGsについて考えるシリーズ「つなごう沖縄」2024年9月26日放送回)
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