宮城県内では10月から養殖カキの水揚げが始まる見通しです。このカキの養殖で行われている「ある作業」が生産量の増加や品質向上に繋がっていることが東北大学の研究で明らかになりました。一体、どんな作業なのでしょうか?
カキをお湯につける?
気仙沼市唐桑町の宿舞根漁港、穏やかな湾内ではカキの養殖が盛んです。
カキ漁師の鈴木芳則さん。いかだからカキをクレーンで吊り上げると、船にあるお湯の中へ。お湯の温度は70度。10秒ほど浸すと再び海の中へ戻しました。
こうした作業は「温湯処理」と呼ばれ鈴木さんは20年ほど前から行っています。
カキ漁師 鈴木芳則さん:
「(温湯処理は)むきの状態によって初むきの2ヶ月前に行います。年2回、もしくは1回」
では、なぜ「温湯処理」をするのでしょうか?
身入りが良くなるワケ
カキ漁師 鈴木芳則さん:
「みんな死んでいる(付着物が)ほとんどゼロです。やはり温湯処理をすると身の入り変わってくるし、作業が楽、ゴミが無くて」
この「温湯処理」に注目し研究した東北大学の坂巻隆史准教授です。坂巻准教授らは志津川湾内のカキ養殖場でおよそ5か月間「温湯処理」の実験を行いました。
東北大学工学研究科 坂巻隆史准教授:
「(温湯)処理をした場所と、していない場所を作り、それを比較する研究。それぞれの場所で海の中を漂う物質や海底に沈む物質、またカキそのものをサンプリングして、物質の動態を理解する研究をした」
「温湯処理」でカキの殻についているものが…
実験の結果「温湯処理」をすると、カキの殻に付着している生物が取り除かれ3割ほど身の重量が増えたことが確認されました。また、カキの身に含まれる必須脂肪酸のEPAやDHAが15%ほど増加することも分かりました。
東北大学工学研究科 坂巻隆史准教授:
「カキの成長が良くなることは経験的に漁師も分かっていたがどれくらい、いつ良くなるかというのを定量的に示した。量だけではなくカキの品質が良くなる、栄養価が上昇する人間にとっても、そういう結果を導けた」
さらに、カキを育てる漁場にとっても良い効果が…。
海底を汚すのを防ぐ?
東北大学工学研究科 坂巻隆史准教授:
「海底に沈んでいく有機物を大幅に削減できる。これは海底を汚してしまうが、その量を減らす効果が実証できた」
カキ漁師の鈴木芳則さんも温湯処理の効果を実感しています。
カキ漁師 鈴木芳則さん:
「(Q 温湯処理をするとしないのでは)全然違う。カキの栄養素はみんな競合しているので取り合いなので。(付着物を)除去してやるとカキがプランクトンを独り占め出来るので身の入りが非常に良くなる」
手間暇かけて育てているカキ。10月中旬に出荷される予定です。
坂巻准教授によると、カキの餌となる植物プランクトンなどにも限りはあるのでいかに効率的に生産するかが重要。「温湯処理」はそうした効率化や生産量の増加につながる良い事例だと話していました。
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