アジア太平洋ギフテッド教育研究大会

今年8月に香川大学で開かれた「アジア太平洋ギフテッド教育研究大会」に、自閉症の画家・石村嘉成さんが登壇しました。英語でのスピーチに、初挑戦です。

登壇前の、打ち合わせでは。。。

(画家 石村嘉成さん)
「こんにちは。」

(父 和徳さん)
「スピーチするタイミングは教えてくれるんかな?」

(担当者)
「『Let's welcome Yoshinari Ishimura』と言うので…」

(父 和徳さん)
「嘉くん、そこで『わ~』っとみんなを引き付けて、そこからやろう。『Ladies and Gentlemen』」

色彩豊かな動物のアートで人気を博す、自閉症の画家・石村嘉成さん。その絵筆からは、個性豊かな動物たちがキャンバスに放たれます。

嘉成さんの療育を導いたトモニ療育センターの河島淳子さんも、その才能に息を飲みます。

(河島淳子さん)
「近づいて見たときに荒々しいぐらいに描いてある。それにも関わらず、遠くに離れると非常に澄んだ優しい目に見える。これくらいの視点で、どうしてこんなに描けるのかしらって。驚いてしまう。」

今年4月から天満屋岡山店で開かれた「石村嘉成展 生きものバンザイ!」

でも…

(石村嘉成さん)
「拍手を」

会場には、温かい拍手が。

嘉成さんが描き出す世界に、多くの人が惹きつけられています。そんな唯一無二のアーティスト・石村嘉成さんを支えたのは、母・有希子さんでした。

母・有希子さんの存在

『何がなんでも、私が立派に育ててみせる!!』(母・有希子さんの手記より)

自閉症と分かった、我が子。身を粉にして療育に取り組んだのが、母・有希子さんでした。

「本当に愛情深い、大事に思う気持ちの強い、人間らしいお母さん」

(石村和徳さん)
「あれだけしたお母さんは、なかなかいないと私は思いますけど」

40歳の若さで病気のため亡くなった、有希子さん。その魂は、嘉成さんの中に生き続けています。

(石村嘉成さん)
「職業は、絵を描くこと。つまり、アーティストです!」

(絵画指導を行う 寺尾いずみさん)
「アーティストとは、描き続けることができる、作り続けることができる人。嘉くんは描く意欲が枯れないんです。」

(父 和徳さん)
「『自閉症』という枕詞がつかないアーティストになってほしい」

英語でのスピーチに挑戦

石村嘉成さんが英語のスピーチを披露するのは、アジア太平洋ギフテッド教育研究大会です。

同年代の子や経験のある人と比べて、ある物事に高い能力を示す「ギフテッド」と呼ばれる子どもたちがいます。その研究者が一堂に会する国際会議が、香川大学を会場に日本で初めて開かれることになり、嘉成さんが招待されました。

ギフテッドの子が才能を伸ばしやすいシステム作りや、特別な才能ゆえに周囲から孤立することのないよう、世間一般の理解を深める取り組みなどについて、各国の第一人者が議論を繰り広げます。

(第18回アジア太平洋ギフテッド教育研究大会実行委員長・愛媛大学教育学部 隅田学 教授)
「やはりこういう才能がある子は孤独になりがちなんですよ。これをみんなに知ってもらって、ネットワークをつくることがとても大事です。今回、それが世界でできるのが本当にうれしいです。」

(父 和徳さん)
「嘉成が、後に続く人の光や道しるべになれば、こんなに幸せなことはありません。本当に一生懸命に療育したこの子の母親が一番喜ぶでしょう。」

(石村嘉成さん)
「今回は『初めての楽しみ』です。」

(父 和徳さん)
「がんばれ嘉くん、英語のスピーチ、初めてやけん。」

英語でのスピーチ・本番!

開会式。公開を控える映画「新居浜ひかり物語 青いライオン」の予告編が上映されると、会場からは拍手が。そして、いよいよ嘉成さんが登壇します。

(石村嘉成さん)
「Ladies and Gentlemen,welcome to Japan.Welcome to Takamatsu.(紳士淑女のみなさん、ようこそ日本へ。ようこそ、高松へ。)」

—会場からの拍手

「I'm Yoshinari Ishimura. I'm painting animal pictures everyday. I’m very happy. I want to have my art exhibition in New York someday!(私は石村嘉成です。毎日動物の絵を描いています。とても幸せです。いつか、ニューヨークで個展を開きたいです!)」

会場からは、盛大な拍手が…

(石村嘉成さん)
「Thank you very much. Good bye, see you again.」

参加者は…

(アジア太平洋ギフテッド教育連盟 チンチ・クォ会長)
「彼は絵に関して卓越した才能がある。特に動物の絵がすばらしいです。」

(記者)
「国際基準で、石村さんはギフテッドなのでしょうか?」

(アジア太平洋ギフテッド教育連盟 チンチ・クォ会長)
「とてもそう思います。才能にあふれています、世界的に。」

パーティーで嘉成さんは、多くの参加者に挨拶、名刺交換をしました。

(石村嘉成さん)
「Nice to meet you, too. すみませんねぇ。」

(参加者)
「この絵の『負けないぞ』『負けるな』は、誰へのメッセージですか?」

(石村嘉成さん)
「自分にメッセージ。」

(参加者)
「いつかオーストラリアにいらしてください。」

(石村嘉成さん)
「I want to go to Australia. I want my art exhibition in Australia someday.」

(ニューサウスウェールズ大学大学院 タスマニア・スクールサービスリーダー ジャクリーン・ハードマンさん)
「彼がどんなに頑張って、英語で本当の気持ちを私たちに伝えようとしていたか。それをすごく感じてしまって、彼が笑ったら一緒に笑いたいし、もし彼が泣きそうになったら、たぶん私たちも一緒に泣いたと思う」

「彼の本当の気持ちが伝わってきました。すばらしいと思いました。映画『青いライオン』もぜひ見たい。」

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