鋭い眼差しでボクシングの練習に励む滝沢栄吉さん(24歳)。
警察官とプロボクサーとの二刀流に挑む新潟県の男性です。

幼少期からの夢の実現と、『県民を勇気づけたい』という警察官としての思いがありました。

7月に東京の後楽園ホールで行われたプロテストに合格した滝沢栄吉さん。
「嬉しいです。自分の中ではもともとプロになるつもりだったので、やっとスタート地点に立てたなという気持ちが強いです」

一方で滝沢さんは、
「自分の中で完全に分けてやってるので、両方頑張ってるって認識はなくて…」
と話します。

滝沢さんは2023年に警察学校を卒業し、現在は柏崎警察署地域課の巡査として交番に勤務し、日々発生する事件や事故の対応のほか、地域のパトロールなどで住民の安全を守っています。

交番勤務は、当番・非番・休みの3交代制で勤務が組まれています。
取材に伺ったこの日は当番日。朝9時から翌朝9時までの勤務です。

― 警察官とボクシングとに通ずるものは?
「失敗することって一日のうちに何回もあって…、できるようにどうすればいいんだろうって姿勢は、ボクシングも仕事も通ずるんじゃないかと思います」

滝沢巡査と北村所長

滝沢さんとペアを組む、北村恭田尻交番所長は
「何でもやりますと言ってますし、一つずつ業務を頑張ってる。個人的にはボクシングの話はしないっていうのも、警察の仕事は警察の仕事で割り切ってやってるんじゃないかな」と信頼を寄せています。

当番日の交番勤務は翌日午前9時まで。
引継ぎをして交番勤務は終わりとなります。

【滝沢栄吉さん】
「この後は2時間くらい仮眠して…。自分の中で2時間は寝るようにしていて、リセットしてから気持ちを切り替えて、ジムに行くようにしています」

警察官とプロボクサーの“二足のわらじ”を履く滝沢栄吉さん。
朝9時までの交番勤務を終えた後、制服から着替えてプロボクサーとしての活動をはじめます。

勤務先の新潟県柏崎市から十日町市のボクシングジムまでは車でおよそ1時間。
早速、シャドーボクシングで自身の構えやポジショニングをチェックします。

所属するこのジムには、丸一日の交番勤務の後に週2回程度通っています。
仮眠をとったとはいえ、体は疲れているはずですが
「メリハリつけて。ボクシングやっている時はボクシングで…」と、ハードな練習に取り組んでいます。

滝沢栄吉さんがボクシングを始めたのは、小学5年生の時でした。

メキメキと実力をつけ、開志学園高校に進学した後は新潟県総体で3連覇を達成。
日本大学時代はボクシング部の副主将として活躍。

大学卒業後、プロボクサーを目指さない仲間も多くいる中で、より過酷な警察官とプロボクサーとの“二刀流”をなぜ決断したのでしょうか?

「警察になりたいというのも、小学生の頃からの夢だったので叶えたいものでもありました。ボクシングで活躍したい、もっとやりたい、っていうものありました」

どちらの夢を選ぶのか…。
2つの道を同時に歩む決断をする背中を押したのは、両親の存在でした。

「父親と母親は自分がやりたいと言ったことに対して反対することなく、黙って見守りながらサポートしてくれて…。両親には感謝しかないです」

『警察官』と『プロボクサー』。
幼い頃からの2つの夢を叶えた滝沢栄吉さんは、強い覚悟を持っています。

「警察官の仕事に関しては、自分の気持ちだけじゃなく市民が最優先だと思っている。自分が楽しんでやるものではなく、市民のためにやろうという意識…」
「ボクシングについては、1番はボクシングをやらせてもらっている警察の皆さんへの感謝。その次に自分が大事にしているのは“楽しむ”こと。ボクシングは楽しめるものだと思っている」

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