2021年に、県立コザ高校の空手部の主将だった男子生徒が、当時の顧問から日常的に理不尽な叱責を受け自殺した問題で、7日、遺族が県を訴えた裁判の第1回口頭弁論が開かれ、生徒の母親が法廷で意見陳述した。

母親の言葉からは、家族の誇りだった息子が叱責や暴言で傷つき、追い込まれた末に命を絶ってしまったことへの無念が滲んだ。

遺族が法廷で語った、理不尽な言葉の数々ー


▽母親の意見陳述
「温厚で人思いの息子は、3人兄弟の次男として我が家に生まれました」

空手部主将だった息子を失った母親が法廷に立った(7日・那覇地裁)

兄の影響で小学1年から空手を始めた息子は、小学3年で全国大会に出場、その後毎年県外大会に出場し、家族や親戚の誇りだった。

▽母親
「高校に入ってからも、楽しい学校生活の話を聞かせてくれました」

しかし、2年に上がり主将になった頃から、顧問からの叱責や暴言が増えたという。母親は、息子に向けられた心ない言葉の数々を、法廷で絞り出した。

▽母親
「使えない、オーラがない、キャプテン辞めれ、部活辞めれ、キモい、ウザい、など人格否定の暴言が息子を苦しめました」

「負ければ“キャプテンが悪い”、勝てば“まぐれ勝ち”、息子は頑張っても努力しても、認めてもらえないことに日々落ち込む様子が見られました」

当時の顧問から送られてきたLINEのメッセージ



「さらに顧問から全体の前で、キャプテン変えたら?と畳みかける容赦ない言葉に、「俺嫌われている…」そんなメッセージを友だちに送っていました」

そして亡くなる前日、これまでにない激高を浴びせられ、翌日初めて部活を休んだ。

▽自死した生徒の言葉(意見陳述書から)
「今日は無理です」「俺の事聞かれたら、分かりませんと答えて下さい」

▽母親
「これが(部員らと交わした)最後の会話となりました」

亡くなった生徒に供えられた線香


「やっと掴んだ九州大会の優勝。そして全国大会を前に命を捨てることがどれだけ悔しかったことでしょうか。どれだけ辛かったことでしょうか」


「息子が亡くなって四十九日の4日後に全国大会が始まりました。名前が印刷されたゼッケンだけが自宅に届き、全国大会用に新調した道着に袖を通すことはできませんでした」

「楽しいはずの部活がきっかけとなり、生きることを諦めてしまったという事実にただ絶望の毎日です。息子を失った日から私たち家族には、周りの“当たり前”が一生来ません」

閉廷後に取材に応じた遺族(7日)


訴状によると当時の顧問は、この問題以前にも指導した部活生が不登校になるなど、複数の事案を起こしていたにも関わらず、学校で詳しく調査するといった適切な対処がなかったと指摘されている。

遺族は、過去の事案があった際に対処していれば自殺は阻止できたとして、当時の校長らの安全配慮義務違反も問うている。

母親は、「息子の将来を奪った責任を取ってほしい」と当時の顧問の責任を指摘し、最後に法廷でこう訴えた。

遺族が意見陳述した那覇地裁(7日)


▽母親
「理不尽な暴言や叱責やパワハラでは何一つ育たないこと、それらは教育でも指導でもないということをすべての人に分かってほしいです」

「子どもたちの大切な命や将来が誰にも奪われることなく、これ以上学校や部活で苦しまないでほしい」

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