上田市に1軒の総菜店がオープンしました。
店を開いたのは「脱サラ」して農家に転身した32歳の男性です。
背中を押したのは、子どもに安心して食べられる野菜を作りたいという母親の思いでした。

松本祐也(ゆうや)さん:
「採れたてのやつを基本的に並べるようにしています」
客:
「トマトもらってってもいい?」
松本さん:
「ああぜひぜひ、ありがとうございます」

その日に採れた野菜が並ぶこちらの店。


青果店ではなく、農家直営の総菜店です。

上田市のスーパーの一角に今年4月にオープンした「旬菜ベジまる」。

プチプチした触感がくせになる人も多いという、もち麦の白和えや、レーズンが香るキャロットラぺ、夏野菜がゴロゴロと入ったピリ辛ドライカレーなどメニューは12種類。

料理の主役は農薬を使わずに育てた野菜です。


前田玲奈店長:
「お野菜たっぷりのお総菜っていうのが一番のところなので、旬の野菜は味も濃いですし、野菜の味がちゃんとするんですよね。なるべく野菜の素材の味を生かして美味しく食べられるっていうところを一番重要だと思って」

旬の野菜を味わってほしいと、メニューは、季節の変化を示す二十四節気にあわせて2週間ごとに変えるというこだわりようです。

客:
「おいしいんですよ、お野菜新鮮ですしね。私たち年寄りは作れないようなのいただけるので」
客:
「すごくやさしい。でも味が染みていてね、しっかりとしているので物足りなさはなくて」


前田店長:
「この野菜を育てた人、まず土を作ってくれて種をまいて大切に育てて、そうやって誰かが作ってくれた野菜が栄養となって元気に過ごせているんだなっていうところを感じながら食べてくれたら、本当にうれしいなと思っています」

ベジまるを出店したのは、市内で農薬を使わずに野菜の栽培に取り組む松本祐也(ゆうや)さん32歳。

「おっ、ありました。べっぴんさん」




上田市出身で、埼玉県の大学を卒業後、生活に身近な食の仕事をしたいと水産会社に勤めましたが、6年前に脱サラして農家を始めました。

松本さん:
「実家に帰ってくるたびに荒廃地の畑がどんどん増えてくる。あぁあのおじいさん、ここでやっていたのにやめちゃったなとか、そういうのを見るとなんかできるんじゃないかなって」


市内の耕作放棄地6か所、およそ6000平方メートルで、母親の美津子(みつこ)さんと従業員2人とともに60種類の野菜を作り、市内の直売所やインターネットなどで販売しています。

松本さん:
「実際入れるのはこの辺のたい肥。きのこの培養土ですね。これを1年間くらいほったらかしにして、発酵を繰り返して細かくなったものを畑に入れてってあげる」

エノキ栽培に使われる、おが屑などで土づくりをしています。

手間暇をかけ、こだわりの農法で栽培を続けています。

松本さん:
「やっぱ味じゃないですかね。甘くなるっていうんですか、野菜本来の味がそのまま出てくるっていうのが一番のメリットなんじゃないかなと」

野菜づくりを選んだ理由は、母・美津子さんの影響が大きかったからだといいます。


松本祐也さん:
「25年前くらいから母が子どもに安心して食べられる野菜をっていうので、本当に小さい家庭菜園を始めたんだよね。まあしばらく、ろくなもん採れてなかったんですけど」

美津子さん:
「もう本当に草畑になっちゃって」

祐也さん:
「小さいころから僕はそういうのを見てきたんで」

美津子さんは県内の専門家や書籍などから学び、知識や農法を身につけました。

母のやり方をそのまま受け継いだという祐也さん。

この栽培方法を守っていく。

そして、野菜本来の味わいを多くの人に知ってほしいと、ベジまるをオープンさせました。

祐也さん:
「母がそうやって自分に対してやってくれたことと同じように、自分も次の世代に向けて今やっていることを残していく。せめて知ってもらうだけでもいいのでということはやっていきたいなと思います」

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