今回のヒーローインタビューは、奥深さで人気上昇中、ブラジリアン柔術で宮城から世界に挑む若き格闘家、熊田謙信選手に注目です。柔道から転身し、才能を開花。その裏には若くして味わった挫折と、格闘家として競う兄弟の強い絆がありました。

柔術界のホープ・熊田謙信選手

仙台市宮城野区原町のSENDAI柔術アカデミー。

9年前に開設されたこの道場が、いま活気を帯びています。柔道をもとに海外で発展したブラジリアン柔術で有名なグレイシー一族の系譜を受け継ぐ角田憲之氏の道場です。

SENDAI柔術アカデミー 角田憲之代表:
「やっぱりその一手一手がすごく大事で、一手にすると逆にやられてしまうので、そこはもう何手先も考えて打っていかないといけないですね。チェスゲームを制するように理論とかを学んで実戦していくという形ですね」

SENDAI柔術アカデミー 角田憲之代表

実践的なノウハウが多く、護身術として習う生徒も増えているとのこと。

そんなブラジリアン柔術の道で成長を続けているのが、21歳の熊田堅信選手。仙台育英高校在学中に柔術を始め、数年後に全日本選手権で初優勝、柔術界のホープとなりました。

格闘家 熊田謙信選手:
「やっぱりどちらかというと本能でというよりも考えて、何手先を読んでいくかっていう風になってくると思うので、首を絞める腕をとるが基本だと思うんです。肩もきめたり足もきめたり、いろんなところ、関節系はほんとどこでも決められると思います」

自分より体格が上回る相手でも、テクニック次第で仕留めることができるのがブラジリアン柔術、蛇のように絡みつき、頸動脈やあらゆる関節を狙います。実戦では時に意識を失うこともあります。理論の学習と実践が重要です。

熊田謙信選手:
「なんていうか、奥が深いというか。感覚じゃなくてやればどんどんやるだけ強くなっていくというのが、魅力の一つだと思います。柔道は、教えられるとき感覚でって言われることが多いのですが、柔術は結構答えがほぼ必ずあって、分かんなかったらすぐそれを教えてもらえるのが、魅力の一つなのかなと思います」

中学時代の挫折と再生

熊田謙信選手:
「(Q運動神経には自信があった?)いや、ないです。兄弟の中では多分一番運動神経が悪いんじゃないかなと。7人兄弟で、男・男・女で自分真ん中なんですけど、あと弟が3人。自分は超おとなしい方です。兄弟の中にいると肩身狭くなって静かになるタイプです」

心身の鍛錬にと始めたのが柔道、しかし中学時代、思わぬライバルが現れます。

熊田謙信選手:
「弟がものすごく柔道の才能があって。でも、自分の方が練習はしてた。 ただやっぱり弟の成績を越せなくて。で、なんか中学校ぐらいのときに才能ないのかなと思って辞めたくなったっていうか。(Q 限界ですか?)感じました」

柔道を諦めた熊田選手、全ての目標を失いました。

熊田謙信選手:
「なにやってもうまくいかないというのは、やっぱり中学のときとか高校のときとか。高校受験も落ちてるんで、公立高校とか。ほんと、最初はかっこつけくらいの当時気持ちだったと思うんですけど。体験で来たけれど、最初ボコボコにされて、それでしたねきっかけは。そこから絶対やりたいと」

柔術との出会いで取り戻した向上心。柔道の経験をもとに、彼は急成長を果たします。今では寝ても覚めても「柔術」。あふれる思考はノートに書き留めるという研究熱心な一面も。

熊田謙信選手:
「メモるんですよ。メモってこれは嫌なパターンとかで、こっちは結構得意なパターンのリアクションとか書いてあったりして。書くことによって閃くことがあったりとかする感じです」

柔術によって開かれた世界への扉、その頂きは手に届くところまで近づいています。

熊田謙信選手:
「毎日めちゃめちゃ練習してるので、ウェイトもしたり結構いろいろして、なんか減量中とかも、ふとなんか色々思うこともあるんですけど、でもやっぱり好きなんだろうなと」

弟との絆とは

熊田謙信選手:
「兄弟の存在は非常に大きかったと思います。多分、弟がいなければ、そもそも柔道辞めてなかったと思うんですよ。今の自分があるのは兄弟の影響がすごく大きいと思います」

熊田選手の未来を変えたという、弟の愛留(まなと)選手が、柔術道場に姿を現しました。現在は柴田高校柔道部のエース。

柴田高校柔道部 謙信選手の弟 熊田愛留選手:
「(Q 兄の柔術転向について)そうかもしれないですね、もしかしたら。兄よりも自分の方が柔道の才能がありまして…」

柔道に活かそうとこの道場に通っている愛留選手。組み合うことで互いの状態がわかるという二人、この日も兄弟がぶつかり合います。

投げ技が主体の柔道、対して柔術はその隙を突いて関節を狙います。挑戦を受ける熊田選手、弟を容赦なく締め上げます。

格闘技で結ばれた兄弟。競技は違えど、競い合うことで成長を続けてきました。この日は、兄の柔術が弟を圧倒しました。

熊田謙信選手:
「まだ全然わかっていない部分がいっぱいあるので、そこを柔道で上手く落とし込んでアジャストしていけばなと、アドバイスをできたらと思うんです。でもやっぱり難しいですよね」

謙信選手の弟 熊田愛留選手:
「技術的にも柔道の方は勝てると思うんですけど。足を持たれると柔術になってしまうので、久々に本気でやってもらいました」


熊田謙信選手:
「まだ本気じゃないです。ちなみに半分ぐらいです。こんなもんじゃないです」
謙信選手の弟 熊田愛留選手:
「最後のところカットですね、あれは。最後のところカットですね。絶対に(笑)」

弟はインターハイへ、謙信選手は世界へ

6月、女川町で開催された柔道の県高校総体。熊田選手のサポートで、弟の愛留選手、大一番を迎えていました。インターハイ出場をかけた個人戦、弟の雄姿を観客席から見守ります。

見守る熊田選手の目の前で、愛留選手、あざやかなイッポン勝ちです。

熊田謙信選手:
「やっぱ柔術にはない、華やかさというか映えですね」

そして、愛留選手はみごと県総体で優勝、初のインターハイへ。成長を続ける弟に、兄も負けるわけにはいきません。

格闘家 熊田謙信選手:
「まずは来月末にアジア大会があって、そのあとグアムでの試合があって。海外の試合が重なるので1個ずつ段階踏んでいって、来年世界大会勝てれば。最終的にはやっぱり世界チャンピオンになりたい。そこを目指さなくなったときが多分辞めるときなのかなと思う」

【tbcテレビ ヒーローインタビューより】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。