新たな場所での再出発に笑顔があふれました。能登半島地震による大規模火災で工場が全焼、店舗兼住宅も全壊した石川県輪島市のケーキ店が6月、およそ130キロ離れた金沢市近郊の野々市市のシェアキッチンで営業を再開しました。

7日、大きな荷物を手に野々市市のシェアキッチンを訪れたのは高野護さんと母・貴子さん、そして88歳の祖母・美智代さんです。

母・貴子さん「これ重いしそこ置いといて」祖母・美智代さん「大丈夫だよ」

慣れた手つきでエプロンを身につけケーキ作りに取りかかります。貴子さんと美智代さんは現役のケーキ職人です。

もともとは、1965年(昭和40年)に輪島朝市の近くで美智代さんと今は亡き夫の成治さんが始めた「たかの洋菓子店」

元日の地震と大規模な火災で工場は全焼し店舗兼住宅は全壊しました。

美智代さんと貴子さんは現在、金沢市のみなし仮設で避難生活を送っています。

高野美智代さん「店もぺちゃんこ。工場も全部燃えてどこがどこだかわからない。こんな目にあうとは思わなんだわいね、一生のうちに。じいちゃんと2人して店こしらえて幸せだったのに」

大好きな店や工場、家を失った2人に、金沢で会計士として働いている孫の護さんがシェアキッチンでの臨時営業を提案しました。

高野護さん「ばあちゃんが「60年間ケーキ屋をやってきたけど結局、最後は何もなくなってしまったわ」という風に言ってて。うちのお菓子のことを好きでいてくれるファンの人もいるし僕自身もファンだし。そういう人たちが残ってるんだよってわかってほしいなと」

母・高野貴子さん「はじめは渋々だったんですけど、やっぱりやりだすと楽しい」

使い慣れない設備に戸惑いながら仕込みを進めますが、IHコンロの上に金属のボールを置き焦がしてしまいました。

母・貴子さん「勝手が違うと難しい?」祖母・美智代さん「難しい」

再開に向けてケーキ作りを練習した護さんも、もちろん戦力の1人です。

高野護さん「一番の目的は2人に元気になってほしい。いっぱい売れてほしいっていうのもあるけど、何より楽しくするのが一番大事かな」

再開当日の朝、シェアキッチンではケーキが次々と焼き上がっていました。

店の名物のブッセ200個と洋酒のケーキ「サバラン」が無事に完成。

正午のオープンを前にさっそく再開を聞きつけた買い物客が訪れました。輪島の馴染み客もやってきました。美智代さんも久しぶりの再開に笑顔があふれます。

買い物客「奥さんに買ってきてと言われて、僕が輪島出身で(妻が)食べてみたいと」「昔から家族みんなで食べていチーズブッセなのですごくきょう楽しみにしてきた」

高野護さん「うちのお菓子が輪島の味というとちょっとおこがましいかもしれないけど、輪島を思い出しながら食べてもらえたらうれしい」

たかの洋菓子では、臨時営業は今後月に1度行っていきたいと話していますが、輪島で人気のケーキは多くのお客さんの「楽しみ」になりそうです。

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