函館名物スルメイカの初水揚げは、去年より大幅に漁獲量が減りました。そんな中、新たな活路を見い出す動きが広がっています。

5日朝の函館漁港です。6月1日に漁が解禁になった「スルメイカ」が初水揚げされました。しかし、漁師たちは浮かない表情です。

漁師
「全然ダメだった」「商売になんねぇべさ」

ここ数年、記録的な不漁が続いている道南のスルメイカ漁。5日朝の初競りでは、去年の倍となる1キロ8000円の高値がつきました。

スルメイカはどこに行ってしまったのでしょうか。不漁の原因をもうひとホリします。

 イカをイメージした「イカ踊り」に、マスコットキャラクターのイカール星人!イカの町として知られる函館の名物が、いま大ピンチです。

 5日朝の初水揚げされたスルメイカは11隻で200キロと、過去最低だった去年を800キロ下回りました。大きさも小ぶりなものが目立ちます。

漁師
「(いつもより小さいんですか?)小さい小さい」「全然話になんない。まるでだめ」

 初競りでは最も高いもので1キロ8000円と、過去最高の値がつきました。

函館魚市場 美ノ谷貴宏 営業部長
「(キロ8000円)ご祝儀相場ですね。この後はいくらか落ち着いてくると思いますけど、これから夏・秋に向けて水揚げ増えることを祈るしかありません」

水揚げされたばかりのスルメイカ。そのお味は…。

 藤田忠士記者
「いただきます!コリコリしてておいしいですね。この食感」

一方で、鮮魚店からは不安の声があがっています。

鮮魚店
「ちょっと心細いねスタートがね。函館のメインだから頑張って売りたいとは思うけど、この値段でお客さんがウンというかね」

今年も幸先の悪いスタートとなったスルメイカ漁。

 5月に函館水産試験場が日本海で行った漁獲調査では、4日間でわずか2匹しか獲れず、スルメイカの分布密度は、2001年以降で最も低い数値でした。

資源量の減少について、専門家は…。

函館頭足類科学研究所 桜井泰憲 所長
「本来は、もう6月になれば、ある程度もう15センチぐらいのイカ、少し近づいてきて、それからどんどん増えてくるんですけども、それも今非常に少ない状況ですね」

この時期とれるイカは、主に九州付近の対馬海峡から東シナ海で産まれ、日本海を北上してきます。

一度に数万から20万という膨大な数の産卵を行いますが、ここ数十年の間に日本近海の海流が変化した影響で、激しい海流の渦に巻き込まれるなど、ふ化したイカは、そのほとんどが生き残れていないというのです。

 函館頭足類科学研究所 桜井泰憲 所長
「これ復活するとすれば、よほど、いまのイカがですね、少し取り控えて、少しでも増える方向に持っていければいいんですけども」

イカの不漁が続く一方、函館では、安定した水産物の確保を目的に「養殖」に活路を見い出しています。

函館サーモン部 松川雅樹さん
「われわれが行っている“サーモン養殖の生け簀”です」

 函館にあるトラウトサーモンの養殖場です。

市の補助金を活用しながら、3年前から試験的に養殖をはじめ、今シーズンは1万匹以上の水揚げを見込んでいます。

函館サーモン部 松川雅樹さん
「急激な海洋環境の変化がありまして、今まで取れてものがとれない。このままではいけないのかなという思いがありまして。サーモン養殖に着目した」
「今年からオリジナルのエサを開発しまして、函館といえばスルメイカですので」

こだわりのエサには、イカめしなどを作った時に出る「残りかす」からできた「イカパウダー」をエサに混ぜました。

函館の養殖場で育つトラウトサーモン

 これにより旨味が増し、飽きのこない上質な脂で、函館近郊の寿司店やスーパーで徐々に人気が高まっています。

函館サーモン部 松川雅樹さん
「スルメイカと肩を並べる二代海産物として喜んでもらえれば」

イカパウダーを餌に混ぜているのが函館らしいところで、函館の新たな名物になるかもしれません。

函館では、3年前からサーモンの養殖が始まっていて、漁獲量は、2022年度は400匹、昨年度は5000匹、今年度は7月上旬くらいまで水揚げを行い、1万1000匹の漁獲を見込んでいます。

「函館サーモン」は、 函館近郊の寿司店や鮮魚店のほか、一部は札幌や東京などにも出荷されています。

こうしたサーモンの養殖は全道に広がっています。

現在、北海道内10か所にサーモンの養殖場があります。

道によりますと、背景にはサンマやサケ、イカなどの不漁があり、安定的に水産物を確保する狙いがあるということです。

では、なぜ「サーモン」なのでしょうか?サーモンが養殖魚として選ばれる理由は「育てやすさ」や「生存率の高さ」にあります。

メリットは「漁獲量を調整でき、鮮度管理がしやすい」こと。燃料代もかからないし、獲れすぎて価格が下がることもなくなります。
 
一方、デメリットは、「病気が発生すると広がりやすい」「エサ代と施設運営など経費がかかる」などがあります。

海の異変が叫ばれる中、養殖や未利用魚の活用など、将来に向けての対策が必要です。

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