事件は子どもを守り育てる、大人の手によって起こりました。

里子たちを受け入れる札幌市南区の「ファミリーホーム」で起きた暴行傷害事件。

そもそもファミリーホームとは…何かというと、児童養護施設とは違います。

 里親の規模を大きくしたようなもので、自宅に子どもを迎え入れ、最大6人の子どもたちと暮らします。

今回の事件を受けて、HBCが独自に入手した内部資料から虐待の背景と、再発防止を考えます。

池田龍(いけだ・たつみ)被告、38歳。

 池田被告は今年2月、札幌市南区のファミリーホームに入居していた10歳未満の男の子の顔を殴るなどした暴行の罪で…。

3月には、入居する別の10代の男の子を足で蹴るなどして、軽いけがをさせた傷害の罪で逮捕・起訴されています。

警察の取り調べに、池田被告は動機について「ファミリーホームの約束事を守らなかった」といった趣旨の話をしているといいます。

2022年4月から、ファミリーホームの運営をはじめ、今年3月までのおよそ2年間で、4人の子どもを受け入れていました。

 “ファミリーホーム”とは、児童養護施設とは異なり、里親や養護施設に勤務経験のある人が「養育者」となります。

最大6人の子供たちを「里親」と同じように、家庭に受け入れ、養育しています。

 HBCは、札幌市の児童相談所に情報公開請求をし、200ページにわたる池田被告のファミリーホームに関する資料を入手しました。

池田被告は、警察の調べに「ファミリーホームの仕事に、興味があった」と話しているということです。

 入手した資料には、札幌市からファミリーホームの運営許可が下りた2022年3月当時から、昨年度までの情報が記されており、池田被告が3年以上、児童養護施設で働いていたことが読み取れます。

近所に住む人は…
「(池田被告と話したことは?)ないよ。頭を下げれば向こう(被告も)も下げるけどね」

子どもの虹情報研修センター 増沢高 研究部長
「(被告自身が)ちょっと抱え込みが強くあったのかなというところは、少し想像するところなんですね」

周囲の目が、届きにくかったその場所で起こった事件の裏には、いったい何があったのでしょうか。

池田龍被告38歳。

札幌市南区で運営していたファミリーホームで、入居していた男の子2人に対し、暴行を加えたり、けがをさせたりした罪に問われています。

HBCが、札幌市児童相談所への情報公開請求で入手した、およそ200ページの資料。

池田被告が運営していたファミリーホームに関するものです。

資料にある見取り図によると、子どもたちは、2階の個室を与えられていました。

 子どもたちに提供されていた、食事のメニュー表です。全体に、質素さがうかがえます。

そして、池田被告本人と「補助者」の勤務表です。

補助者は、食事や入浴など、生活のサポートを運営者とともに行います。

4人の補助者は、朝や下校後の時間など、忙しい時間帯には勤務しているものの、池田被告は基本24時間、子どもたちを養育していたことが、勤務表からはうかがえます。

 子どもの虹情報研究センター 増沢高 研究部長
「ファミリーホーム経営されて2年くらいですよね…そういった意味ではまだまだ(補助者と)強いチームワークを構築できていなかったというところは(暴行に至った)可能性としてあるとは思います」

さらに、虐待問題を研究する専門家が着目したのは“地域との関わり合い”です。

子どもの虹情報研修センター 増沢高 研究部長
「気になるのが、地域のかたもファミリーセンターのことを知らなかった。つまり地域の繋がりが、非常に薄かったということで、これは非常に大事なポイント」

なかには「里子を受け入れたことすら知らなかった…」と話す住人もいるほど、周囲との関わりが希薄だった池田被告。

子どもの虹情報研修センター 増沢高 研究部長
「全体の地域のネットの中で支えていくという視点が必要。ちょっと抱え込みが強くあったのかなというのは、少し想像するところなんですね」

池田被告は、児童相談所に提出する書類でも【施設内での虐待はない】と回答。

また、札幌市の児童相談所が行った2回の定期訪問では、特に指導の対象となるような事案は、確認されなかったとされています。

札幌市児童相談所 湯谷宣文 家庭支援課長
「訪問した時には、受傷とかも確認できませんでしたし、特に子供たちから虐待が疑われるような証言もありませんでした」

札幌市内で、里親や里子のケアを行う専門家も、今回の事件をこう振り返ります。

興正フォスタリングセンター 小野実佐 統括責任者
「(子どもたちが)困った時にどう解決していくか、いろいろな課題が含まれていたんじゃないかと思んです。私たち支援者側も、それを一つ一つ解決するために、もっと出来たことがあるんじゃないか…とも思うので」

「(困りごとを)敏感に察知して、対応していくということを積み重ねていかないといけないんじゃないかと(感じた)」

事件の背景には、いったい何があったのか。池田龍被告の初公判は、6月6日行われます。

ファミリーホームでは、食費・光熱費などの生活費や、子供の教育に関わる費用や補助者の給料まで、国などから補助金が支給されることになっています。

ファミリーホームの責任者である「養育者」の条件は、次の通りです。

・里親経験がある人。
・児童養護施設などで3年以上の勤務経験がある人。

研修や面談が行われ、そこで適格と判断されることで「里親」になることができます。つまりファミリーホームの「養育者」になるための“特別な資格”などはありません。

しかし、子どもの虹情報研修センターの増沢高さんは、次のような指摘もしています。

 池田被告の場合は、児童養護施設に3年以上勤務していたこともあり、養育者の条件を満たしています。

ただ、池田被告が勤務先の施設で、どういう業務に従事していたのか?どういう人間性の持ち主だったのか…などを、より深く考慮すべきだった…と指摘しています。

事件の背景に何があったのか、6日の法廷で何を語るのか…池田龍被告の初公判が注目されます。

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