月はどうやって生まれたのか。いくつもの仮説の中で最有力なのが、「ジャイアント・インパクト説」。この説を裏付けるのが、月の内部にあるはずの地球由来の物質です。それを調べるため、日本初の月面着陸を成功させた探査機「SLIM」は、あえてクレーター近くの着陸困難な場所に降り立ったのです。そこで特殊なカメラで撮影したものとは?画像の分析から分かる“月の起源”とは?手作り解説でお伝えします。

着陸場所はあえて石が多い場所

日本初の月面着陸を成功させた「SLIM」ですが、降りた場所が大事だったんです。

そこは、クレーター近くの斜面で、岩石が転がっているところ。

なぜ、あえて着陸が難しい場所を選んだのか。「月の起源を探る」という重大なミッションがあったからなんです。

月の起源は?4つの説

太陽系が誕生したのはおよそ46億年前。宇宙空間のガスや塵(ちり)が集まって回転を始め、次第に中心部の温度や圧力、密度が高くなって、太陽が生まれました。

残ったガスや塵も衝突を重ねて大きな塊となり、地球などの惑星になったのですが、月がどうやって生まれたのかは、はっきりと分かっていません。

これまでに大きく4つの説がありました。

地球が誕生した頃、同じようにして生まれた「双子説」。

地球の一部が分裂してできた「親子説」。

まったく違うところでできた月が地球の引力に捕まった「捕獲説」。

そして、最も有力な説が、「ジャイアント・インパクト説」です。

最有力「ジャイアントインパクト説」とは…

地球が誕生して間もない頃に火星ほどの大きさの星が衝突したことで出来たという説。その衝撃は地球の奥深くに及び、「マントル」の成分が宇宙に飛び散ったとみられます。

そうしたマントルを含む破片が土星の環のように地球を周回し、やがて集まって大きな塊となり月ができたとされるのです。

謎解明の手がかりは「カンラン石」

この説を裏付けるためには、月の内部の物質が、地球の「マントル」と同じ成分であることを確かめる必要があります。

その手がかりとなるのが、「マントル」が冷えて固まった「カンラン石」。地球上でも、火山の周辺などでみられる石です。

同じような石が月面にもあるのか、そこで注目されたのが、今、「SLIM」が降り立ったクレーター周辺の石なんです。

クレーターは、月面に隕石が衝突してできた穴で、その周辺には、衝撃で月の内部から飛び出した石が飛び散っています。

「SLIM」は、まさにその石を確認できる近くまで行ったわけです。はたして、「カンラン石」は見つかったのでしょうか…

月面で「カンラン石」を発見

研究チームは、「SLIM」が撮影した10個の石をマーキングし、それぞれ犬の種類の名前を付けて分析を進めています。

「SLIM」には特殊なカメラが搭載されていて、光の波長を分析し、岩石に含まれる物質を特定できるのですが、「ダルメシアン」と名付けた石に「カンラン石」が含まれていることが分かったのです。

今後、さらに画像の解析などが進み、この「カンラン石」が地球のものと十分に似ていることが分かれば、「ジャイアント・インパクト説」を補強することになります。

月の起源にどこまで迫ることができるのでしょうか。

(「サンデーモーニング」2024年6月2日放送より)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。