きょうは「医療的ケア児」についてです。「医療的ケア児」とは新生児集中治療室・NICUなどに長期入院したあと、引き続き、たんの吸引や人工呼吸器の装着など、日常生活を営むために医療的なケアを必要とする子どものことです。自力で動くことができる子や重度の障害がある子などさまざまですが、全国でおよそ2万人、山口県では200人弱います。増加傾向にあると言われる「医療的ケア児」。ある家族を通して、社会の支援などを考えたいと思います。

生後1年半で在宅ケアに

伯真輝くん、8歳。医療的ケア児で、母親の景子さんら家族に支えられて生活しています。生まれたときの体重は754グラムで、うまく呼吸ができず低酸素状態になり、運動機能に障害がある脳性まひとなりました。

母・佐伯景子さん
「今後どうなるかは分からないような状態だったので、とりあえず命が助かってほしいという思いだけでしたね」

生まれてすぐNICUに入院し、家で生活できるようになったのは、生後1年半がたってからでした。真輝くんは、こまめなたんの吸引や、1日に4回胃ろうから栄養を与えるなどのケアを必要としています。訪問看護師が週5回、体調の確認や入浴などを行います。

原田訪問看護センター訪問看護師・道中琴美さん(真輝さんが1歳半のときから担当)
「本当、大きくなったよね」

姉の彩日音さんも、真輝くんと過ごす時間を大切にしています。

姉・佐伯彩日音さん
「まさ君のほっぺがとても気持ちいいので、私が触って遊んでいます」

在宅で授業、姉の学校で交流会も

家での生活が中心ですが、総合支援学校の先生に週2回来てもらい、授業を受けています。また、年に2、3回は総合支援学校に出向いていて、去年は彩日音さんの通う学校での交流会にも参加しました。家の中には施設や病院の関係者、家族からのメッセージがずらりと並んでいます。

彩日音さん
「みんな、まさ君のことを大切に思ってくれてるんだなってことを思います」
景子さん
「お姉ちゃんの学校に行って、そういう友達とも会えたりとか、いろんな刺激が増えたかなと思って」

家族を支えるショートステイ施設

真輝くんは多くの人と関わりながらこれまで生きてきました。この日は、1泊2日で高齢者も利用するショートステイの施設に宿泊します。真輝くん1人でのお泊まり。不安にならないように…

景子さん
「看護師さんたちになるべく家と同じようにしていただいてます。このこいのぼり、真くんが作ったんですよ」

日中もケアがあるため、母親の景子さんは、ふだん外出もままなりません。朝4時にいったん起きて水分補給。父親の共之さんが朝の栄養を注入したあとは、景子さんはリビングで過ごす真輝くんの世話をします。日用品の買い出しは訪問看護師のいる1時間半ほどの間に済ませています。なかなか自由な時間をつくることはできず、姉の彩日音さんの行事がある日など、1、2か月に1度はショートステイの施設を利用しています。

景子さん
「医療的ケア児になると夜もなにかとちょっとケアしないといけないとかがあるので、どのお母さんもやっぱりゆっくり休めるときがあるといいのかなとは思ってて、ショートステイがどこの地区でも、近場にあるところを利用して休める環境が整えば、とてもありがたいなとは思ってます」

施設増加へ行政の支援は不可欠

医療的ケア児のショートステイが可能な施設は県内に11か所あります。施設の改修費用などを補助する県の事業により徐々に増えてきましたがまだまだ数は足りない状況です。

コミュニティプレイス生きいき 原田典子・施設長
「医療的ケア児を福祉系の施設でみるということができてるわけですから、この先進の見本を少しでも普及させていこうという風に私は動いてほしいと思うんですね」

原田さんは、受け入れる福祉施設が増えない理由について、施設側の事情があると考えています。人手がかかるため施設全体の利用者数を減らさなくてはいけないこと。夜も手厚いケアが必要で職員に負担がかかること、何かあったときのための協力医との契約などさまざまな課題を指摘します。

原田施設長
「受け入れ施設が各市町で1つあれば、本当にお母さんたちはすごく助かるなと本当に思うので、そこはやっぱり後押ししていくのが行政の役割だろうと思っています」

人件費など、ソフト面での行政の支援が必要と考えています。

景子さん
「真くんも家族の一員だから、あんまり施設をメインに過ごすっていう頭が初めからなくて、在宅で一緒にみんな過ごしたいっていう思いがすごい最初から強かったです」

社会全体で支えるために

在宅で、医療的ケア児を支え続ける家族。その家族を支援するための制度・施設の1つがこのショートステイです。医療技術の進歩に伴い、医療的ケア児が増加傾向にある中、ショートステイの拡充を始め社会全体で支えていく仕組みが必要です。

景子さん
「いろんな人が協力してくれるおかげでこの在宅生活が成り立ってるかなとは思います」

「真輝くんが穏やかに過ごせるように」そのための環境が整うよう願っています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。