相模原市東部の河川や地下水が発がん性の疑われる有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)で汚染されている問題で、同市中央区南橋本の化学・事務用品大手「スリーエム(3M)ジャパン」グループの工場敷地内にある井戸から、国の暫定指針値の34倍のPFASが検出されていたことが、分かった。市民団体が31日、市内で会見し明らかにした。これまで、市や東京新聞が市内で調査した地点で最高濃度。識者は汚染源の可能性があるとの見方を示した。

◆相模原市「下水への排出基準はない。対応を求めていない」

情報公開請求で入手した3Mジャパングループの工場に関する資料を説明する市民団体の代表(左)=31日、相模原市で

 市民団体「相模川さがみ地域協議会」が市に情報公開請求し、工場に関する資料を入手。それによると、3Mジャパンイノベーション相模原事業所が昨年8月、市に対し「所内の井戸で2022年10月、(PFASの一種の)PFOA(ピーフォア)が水1リットル当たり約1700ナノグラムの濃度で検出した」と報告した。井戸の水は防火水槽などに使われた後、下水に排出されるとしている。  国はPFOAなど2種について河川や地下水の暫定指針値として1リットル当たり50ナノグラム以下を設定。市の担当者は「下水への排出基準がないことから、対応を求めていない」とした。

◆過去にPFASを含んだ泡消火剤を製造

3Mジャパン相模原事業所=31日、相模原市で

 工場では2000年までPFASを含んだ泡消火剤を製造していた。3Mジャパン(東京都品川区)の広報担当者は、工場が市内の河川や井戸水の汚染源かどうかは明言せず、「弊社施設以外の水に関する情報については把握していない」とコメントした。  3Mジャパンはアメリカ3Mの日本法人。アメリカ3Mは昨年6月、PFASによる飲料水汚染を巡る訴訟で、最大125億ドル(約2兆円)をアメリカ水道事業者に支払う和解案で暫定合意している。  PFASに詳しい京都大の原田浩二准教授(環境衛生学)は「汚染源がかなり近いか、または敷地内にある可能性が高いと考えられる濃度だ。市は工場側に過去のPFASの使用状況などを詳しく聞き取るべきだ」と指摘する。(松島京太)

 相模原市内のPFAS汚染 神奈川県の2020年度の調査で、相模原市東部を流れる道保川から高濃度で検出されたことを受け、市が翌年度から調査を開始し、中央区南橋本の地点で1リットル当たり約1500ナノグラムのPFASを検出。東京新聞と京都大の調査では、飲用井戸を所有する一部の集合住宅などで高濃度のPFASが混入した飲用水を使っていたことや、道保川の魚類に全国平均の最大340倍のPFASが含まれていたことが判明している。



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