農村地帯の納屋から炎。敷地内の家に燃え移るのでは…。通りがかった男性が家に入ると、寝たきりとおぼしき母親とその娘。火の手が迫る中での救出劇に娘は後日「あの時のお礼を言いたかった」…そのワケとは。

29日の警察署。命の危険を顧みず人命救助に尽力したとして砺波市内に住む会社員、中江健太さん(29)に感謝状が贈られました。

4月15日午後7時半ごろ、富山県砺波市東中の農村地帯。田んぼが広がる一軒家の納屋から火がでました。火はみるみるうちに敷地内の木やカーポートに燃え広がります。

近くの会社に勤務していた中江健太さんは、仕事を終えて帰宅する途中で、この火事に遭遇します。

「燃えてますよ!」「何が?本当に?」

会社員 中江健太さん:ここからちょうど見えて…。その時は小さな焚火くらいの火だったんですけど。いきなりでかくなって、まずいなと思って声をかけに行ったんです。

中江さんは同僚に119番通報を頼む一方、自ら火の手が迫る家に入ってみると…。

部屋には当時94歳で寝たきりと思しき母親と、娘であろう70代の女性に声をかけました。

会社員 中江健太さん:『燃えていますよ』と声をかけて。そしたら『何が?本当に?』という形で。ちょうどこの、ここら辺からお母さんと火を見て、結構でかい火だったので、『避難しましょう』という話をしました」「抱っこですね。(母親を)抱っこして、点滴もって…。

怖い目にあわず最期を迎えられてお礼を…

玄関前まで火が迫っていたため、母親を抱きかかえたまま自宅裏に回ります。裏から出て、会社の事務所に避難させたといいます。

女性も母親も無事で、幸い自宅への延焼はありませんでした。

会社員 中江健太さん:火に対する心配はなかったです

記者:でも、体が動いた?
会社員 中江健太さん:そうですね

中江さんが避難を呼びかけた女性にも話を聞きました。2人が再会するのは火事が起きて以来です。

女性:玄関にいらして、それで初めてわかって。すぐおばあちゃんを抱えて連れて行ってくださって。5月11日に母はもう逝ってしまったんですけど。

けが人もなく母屋にも燃え移らずよかった…

中江さんが救出した女性の母親は火災からおよそ1か月が経った5月11日に老衰のため亡くなったといいます。

女性は、母親が怖い目にあわず最期を迎えられたことに感謝の言葉を口にしました。

女性:あの時のことはお礼言わんなんと思って。会社員 中江健太さん:いえいえ。何ともなくてよかったです。

女性:本当にありがとうございました。

住宅に燃え移る危険を察知、とっさの判断かつ冷静に対処し母娘を救助しました。当時を振り返って─。

会社員 中江健太さん:けが人もなく、母屋にも燃え移らなかったので、僕なりの最善な行動はできたのかなと思いますね。

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