(若狭敬一キャスター)
杉本師匠にお越しいただきました。まずは27日の名人戦の快勝を、どうご覧になりましたか?

(杉本昌隆 八段)
強敵の豊島九段を相手に非常に良い内容でして、序盤は大胆に中盤・終盤は手堅くという感じで、パーフェクトな勝利だったと思います。

(若狭キャスター)
藤井聡太八冠の5月のスケジュールはハードで、叡王戦の負けからスタートし、その後は名人戦を戦い続けまして、いよいよ31日(金)は再び叡王戦という流れですね。

(大石邦彦アンカーマン)
注目の叡王戦なんですが、気になるのは前回の名古屋で行われた第3局の時の藤井八冠の様子でした。全体的に険しい表情が多かったです。手にした扇子を落としてしまうシーンもありました。

杉本師匠、こんな藤井さんは見たことがなかったんですが、いかがですか?

(杉本八段)
そうですね、この時は形勢が逆転して悪くなってしまった時だったんですね。そもそも終盤で逆転して悪くなることも珍しいんですが、その動揺が隠せずにというところで。珍しいですよ、このシーンは。

(大石アンカーマン)
ショックだったということなんですね。叡王戦5番勝負は先に3勝した方が勝ち。ここまで藤井さんは1勝2敗、伊藤七段が2勝1敗です。

実はタイトル戦で藤井さんが先に王手をかけられたのも初めて、同じ相手に2連敗したのも初めてなんですが、この状況をどう見ますか。

(杉本八段)
これは挑戦者の伊藤七段が素晴らしいですね。充実していますし、内容が良いんですよ。藤井八冠も悪くはないですけど、伊藤さんが上回っていたということかなと思いました。

藤井八冠 貴重なあす(29日)の休みをどう使う?

(大石アンカーマン)
実際に王手をかけられていますが、プレッシャーになりますか。

(杉本八段)
プレッシャーは双方にあると思うんですね。追い込んだ伊藤さんも次はプレッシャーがかかります。追い込まれた藤井八冠の方は、大きい勝負でも慣れていますから。ただし、タイトル戦で追い込まれたのは初めてなので、そういう意味では次にどう戦うのか注目ですね。

(大石アンカーマン)
第4局が行われる5月31日(金)までの藤井八冠は大変忙しいんです。きのう(27日)までが北海道での名人戦で、きょう(28日)は移動日です。次の対局までは、あす(29日)は予定がないんですけれども、あさって(30日)には千葉県に移動して、前日検分と前夜祭が行われるので中1日しかないわけです。

(若狭キャスター)
杉本さん、あすのお休みは藤井八冠にとって、どういう1日になりそうですか?

(杉本八段)
通常でしたら体を休める日として家で1日ゆっくりとしているケースもあるかもしれません。ただ、藤井八冠でしたら、いつもと変わらないように将棋の研究というか次の対局に向けた調整をすると思います。

(若狭キャスター)
将棋の研究というのは、どのようにやっているんですか?

(杉本八段)
1日ガッツリと研究会で一対一で行うケースもあれば、1人でAIを相手にパソコンの前でずっとやっているケースもある。

何もない暇な日もあるんですけど、そういう時はテレビを見たりもしますけど、テレビを見ながら携帯電話を持って携帯アプリで将棋を見られるんです、他の棋士をリアルタイムで。それを見て気になる将棋があったら将棋盤に並べ直すと。

(若狭キャスター)
テレビを見ながらも携帯を片手に他の人の将棋の様子を見て、盤に並べたりするわけですね。

(杉本八段)
その方がタイパが良いと。

(大石アンカーマン)
一方で伊藤七段は5月に入って藤井さん以外と2回しか対局してないんですね。となると、相当に藤井八冠の研究をしているんじゃないかと思いますが、いかがですか。

藤井八冠の癖は「扇子をクルクル」伊藤七段の父親は「ドラファン」

(杉本八段)
そうですね対藤井戦ということで、あえて言うと伊藤さんの方が、かなりの時間はとれたでしょうね。

(大石アンカーマン)
その伊藤七段は東京都出身なんですが、お父さんが名古屋出身なので、実はドラゴンズファンです。

2021年度は勝率1位で、藤井八冠の5年連続勝率1位を阻止しました。

こんなエピソードもあります、藤井少年を泣かせた逸話が残っているということなんですが、伊藤七段はかなり強い相手と見ていいですか?

(杉本八段)
ドラゴンズファンというのは素晴らしいなと思いましたけれども…、本当に手強い。タイトルを獲っても、おかしくない実力の持ち主ですよね。

(若狭キャスター)
きょうは視聴者の皆さんからも杉本師匠への質問を受け付けておりまして、愛知県の女性から「杉本師匠も藤井八冠も集中力がすごいと思いますが、集中力を保つ秘訣などはありますか?」

(杉本八段)
私の場合は、目に見える形の目標を設定するんですね。例えば「次の対戦相手は」とか「1年後に、こうなっていたい」とか目標を立てて、それに向けて集中をするという形です。

逆に藤井八冠は、おそらく自分の実力を高めたいという長いスパンでとらえているような気がします。

(若狭キャスター)
その長い目標に向かって地道に、ゆっくり集中していくと。

(杉本八段)
「この相手に勝ちたい」というやり方もあるんですけれど、それだと、その相手用の作戦を考えてしまうので、そうではなくて自分の実力を高めるために何をしたらいいのかという考え方をするのが藤井八冠です。

(若狭キャスター)
他にも「師匠から見て藤井八冠が大人になったなと思う瞬間は、どんな時ですか?」

(杉本八段)
今、全国各地で対局を行っていますけど、その記者会見やインタビューを聞いていると思うんです。今までも、失言というのは無かったですけれども、今は本当に地元に配慮したり、地元の人が聞いて嬉しくなるような発言をしているなと。

(若狭キャスター)
そうですね、アーティストの皆さんのライブ会場って、そんな感じですもんね。
「藤井八冠の癖(くせ)は何ですか?」という質問も来ています。

(杉本八段)
癖って結構、難しいんですけれど、扇子を持っていたら、ちょっとクルクル回していたりする時があるような気がしますよね。

(若狭キャスター)
いよいよ叡王戦は5月31日(金)です。楽しみにしたいと思います、杉本師匠、ありがとうございました。

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