横浜市教育委員会は21日、2019年度から今年4月にかけて横浜地裁で公判があった教員によるわいせつ事件で、多数の職員を動員して法廷の傍聴席に行かせ、一般の人が傍聴できないようにしていたと発表した。村上謙介教職員人事部長は記者会見し、プライバシー保護を求める被害児童・生徒側の要請を受けた対応で「教員を保護しようという意図はない」と釈明し、「行き過ぎだった。一般の方の傍聴の機会が損なわれたことについて、大変申し訳なく思う」と謝罪した。(神谷円香)

◆「関係者が集団で来たと分からないよう、待ち合わせは避けて」

記者会見で謝罪する横浜市教委の村上部長(左)ら

 職員を動員したのは、強制わいせつ罪に問われた小学校校長の他、教員が被告となった計4事件の公判。  地裁では注目事件を除く多くの裁判の傍聴が、抽選ではなく先着順で、立ち見は認められていない。  市教委によると、職員の動員は19年度に3回、昨年12月~今年4月に8回の計11回。4カ所ある学校教育事務所や人事担当部署などから毎回、傍聴席を埋められるよう最大50人を業務として出張させていた。19年度は延べ125人に命じ、昨年12月以降は延べ371人が地裁に赴いた。旅費を支給する場合もあった。  動員が始まったきっかけは、19年度の公判で被害者の保護者が一般傍聴者に事件の内容を知られるのを望まなかったことだと説明。意向を踏まえ、当時の鯉渕信也教育長とも相談した上で、職員が傍聴席を埋める方針を決めた。市教委は、他の3件も保護者の要望に基づく対応と主張した。  職員に出張を命じる文書では、注意事項として「関係者が集団で来たことが分からないよう、裁判所前での待ち合わせは避けて」などと要請していた。市教委は「市の事案だと悟られないようにというのはあった」と認めた。  今月7日に外部から職員動員に関する問い合わせがあったことを受け、市教委は今後の対応を協議。関係部署に20日、今後は実施しないことを通知した。  4件はいずれも市内の児童・生徒が被害者。3件は教員が懲戒免職となり、もう1件も実刑を受けて既に失職している。

横浜市教委が職員に通達した文書には、傍聴の注意事項などが細かく記されていた

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◆江川紹子さん「公開の原則ゆがめ大きな問題」

 ジャーナリスト・江川紹子さんの話 憲法で保障されている裁判公開の原則をゆがめており、大きな問題。公開されることで手続きが公正かチェックできるほか、国民の知る権利につながる。教育現場での性犯罪をどう防ぐかは大きな関心事になっており、裁判は事件の概要や原因を知ることで再発防止を考えるための場でもある。  被害者保護には裁判所も検察庁も神経を使っており、被告人の名前すら隠すケースもある。被害者の家族からプライバシー保護の要望があれば、検察庁への相談を促すのが市教委の適切な対応。なぜ動員を始めたのか、第三者が検証する必要がある。 

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