クローン技術を使い試験管で培養しているのは、東北地方では希少なシロバナタンポポです。
青森県内には江戸時代に板柳町へ持ち込まれましたが、現在、姿を消す恐れがあるためクローン技術を活用しながら保全されています。
雪国では生き残るのが難しい「シロバナタンポポ」
「かわいい!写真映えしやすいね」子供たちが手にしているのは、東北地方では希少なシロバナタンポポ。5月3日に板柳町で開かれたワークショップで花壇に植えられました。
参加した子ども
「白いタンポポ、初めて見た。元気に育って、でっかくなってほしい」
シロバナタンポポは、西日本に多く分布していて、雪国である青森県では人の手で管理しないと生き残るのが難しいとされています。その数少ない県内の栽培地が、室町時代に北畠家の拠点として築かれた古館城の跡です。
シロバナタンポポは、江戸時代に紀行家・菅江真澄が持ち込んだとされていて、代々、北畠家が受け継いできました―。
祖父が守ってきたシロバナタンポポを後世に 29歳の女性の決断
現在、タンポポを守っているのは北畠清美さん(29)で、取材をした5月3日は開花状況を確認するために訪れました。近年は、外来種のタンポポが増えて伝統のシロバナタンポポは減り続けています。2023年は1株確認できましたが、2024年は、ついに…。
シロバナタンポポを探す様子
北畠さん
「それっぽいのもなかったですか?」
教授
「ないですね、今のところ」
北畠清美さん
「一輪でも咲いたら、今年もあったねって安心になっていたので、今年見たら…ないのかって思いが…。これからどうしていけるかなとは思いました」
北畠さんが活動に力を尽くすのは、長くシロバナタンポポを管理していた祖父・武基さんの存在がありました。
北畠さんの祖父・北畠武基さん(1998年の映像)
「いままでで最高だと思います。(見学に)しょっちゅう来ています。学校の先生や一般の人も来ています」
武基さんが2019年に亡くなったあと管理する人がおらず、シロバナタンポポは衰退していきました。その現状を目の当たりにした時、北畠さんの脳裏をよぎったのは祖父が残したある言葉でした―。
『なくせばまいねや…』祖父が愛したシロバナタンポポ
北畠清美さん
「祖父に『シロバナタンポポはなくせばまいねや』と言われていた。祖父が亡くなって、部屋を片付ける時もシロバナタンポポについていっぱい資料が出てきて…。これは『やらなきゃだめでしょう』と思っちゃった」
こうして保全プロジェクトを始めた北畠さんは、2022年から弘前大学教育学部の勝川健三教授に協力をあおぐようになります。
弘前大学教育学部 勝川健三教授
「板柳のタンポポ。花は咲いて種はとれたけど、普通の種の蒔き方だと全く発芽しなかった。それだけ衰弱していると。仕方ないので生物工学的な手法で試験管のなかでなんとか増やせないかと―」
勝川教授はシロバナタンポポを1株掘り上げ、タネのもとになる部分・胚珠を試験管のなかで培養し、同じ遺伝子を持つクローンを作りました。
子どもたちにシロバナタンポポのクローンを紹介する北畠清美さん
「シロバナタンポポの赤ちゃん。種ができる部分を培養する形、いわゆるクローンといいますか…」
子どもたち
「えー!スゴイ!」
北畠さんは大学の研究室で増殖させた苗を初めて一般に公開。多目的ホール・あぷるの花壇に植えることにしました。板柳町への里帰りです。
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