裏金問題の処分をめぐって自民党党内では、処分を受けた議員などから不満が噴出している。一方、岸田総理自身のパーティーに関する疑惑も残されたまま。キーパーソンを、再び取材した。
関係議員39人を処分も岸田総理は見送り
4月4日、自民党は裏金事件をめぐって、関係議員39人に対する処分を決定した。
安倍派の幹部だった塩谷氏と世耕氏には、党の処分で2番目に重い「離党勧告」が下った一方、萩生田氏は「党の役職停止」という軽い処分にとどまるなど、幹部の中でも明暗が分かれた。
また、岸田派をめぐっては、元会計責任者が有罪となったものの、岸田総理自身の処分は見送られた。
岸田総理
「最終的には国民の皆さん、そして党員の皆さんに、ご判断をいただく立場にあると考えています」
こうした対応に、党内からは不満が噴出している。
閣僚経験者
「国民感情からすれば、自民党のトップである総裁が何も責任を取らなかったという事実は分かりやすくて、響くところがあるだろう」
下村議員とされる音声「多分その通りでしょう」
処分された議員の一人が地元でのお詫び行脚を続けている。
下村博文 元文科大臣(下村議員の公式YouTubeより)
「下村博文です。今日はこのような街頭の場をお借りしまして、説明をさせていただいております」
安倍派の幹部を務め、476万円の不記載があった元文科大臣の下村博文議員。1年間の党員資格停止処分を受けた。
下村博文 元文科大臣
「包み隠さず、正直に、お話しをさせていただきます」
2024年2月18日に行われた政治倫理審査会では、下村氏が裏金問題への森元総理の関与について話す可能性があるとみられていたが、言及はなかった。
ところが、 森元総理について、下村氏が語ったという音声データがある。
下村議員とされる音声(提供:深月ユリアさん)
「今回の一連の中で、少なくとも2005年から1999年、森会長の時にそういうスキームを作ってやっていたんだなと今、そういうふうには認識しています」
派閥の裏金づくりが、森元総理が会長だったときに行われていたという認識を語る内容だ。
この音声データは、政倫審の1週間後、下村氏の支援者向けの会合で録音されたものだという。
録音したのは、取材のため会合に参加していたフリージャーナリストの深月ユリアさん。
会合が開かれたという場所は、下村氏の地盤・東京都板橋区の事務所だ。
フリージャーナリスト 深月ユリアさん
「驚きましたね。政倫審の下村議員とは全く印象が違って、とても饒舌にお話をされていた」
音声データには、廃止されるはずだったキックバックが復活した経緯も録音されていた。
下村議員とされる音声
「(政倫審で野党議員に)『5人衆のバックに森さんがいて、そういう形で復活したんじゃないの?』と言われました。多分その通りでしょう。その通りでしょうけど、私がそこにいたわけじゃないから。もし国会で、その通りでしょう、みたいなことを言ったら、下村が森会長の時に、この違法性のある派閥の還付を認めたということで、もうそれで大騒ぎになりますから」
さらに、こうした発言を政倫審でしなかった理由について、「野党に良い材料を与えるようなもの」、「検察に話したことと違うことを話せばもう一度聴取される」とも述べていた。
会合が終わった後、深月さんは下村氏に取材を依頼したが「時間がない」と断られたと話す。
山本恵里伽キャスター
「実際に政倫審で知っていることを言ってなかったとしたら、どういう風に感じますか?」
フリージャーナリスト 深月ユリアさん
「誠意がないなと私は思っている。結局は保身を通したということだと思うんですが、政治家として本当にあるべき姿なのかなと疑問に思いました」
JNNでは、下村氏の事務所に音声データの発言が事実か確認したが、回答はなかった。
4月11日、下村氏に直接取材すると…
Q.森元総理の…
下村博文 元文科大臣
「ノーコメント」
Q.公の場での説明を求められていると思うが?
下村博文 元文科大臣
「いろんなところで説明している」
「不記載とは中身が全然違う」 処分を受けた議員の不満
一方、「半年間の党の役職停止」処分を受けた安倍派の菅家一郎衆議院議員。
4月12日夜、福島県・会津若松市の飲食店に姿を見せた。
半年間の党の役職停止を受けた 安倍派 菅家一郎 衆院議員
「パーティー券のキックバック等の問題において、大変信頼を損ねて、ご心配をおかけしておりますことに心からお詫びを申し上げたいと存じます。申し訳ございません」
集まっていたのは、地元の支持者たち。
派閥からのキックバックは、5年間で1289万円にのぼっていた。
その使い道を問われると…
安倍派 菅家一郎 衆院議員
「事務所の経費、例えば印刷代だったり、通信費だったり。私個人の懐に入ったのは一銭もないということだけはお伝えしておきたい」
地元の支持者
「その還流する仕組みを誰も知らないというのがおかしいんじゃないのかな」
安倍派 菅家一郎 衆院議員
「我々としても不思議だなって。ただ(派閥の)会長と事務局長で進めてきたのは間違いない。安倍会長も亡くなって、細田会長も亡くなって。これがどういうことだったのか、曖昧になってしまっているのではないか。ただ本当にわからなかったのかと言われると、おっしゃるように、それはちょっとね・・・」
党の処分について、厳しい意見も。
地元の支持者
「私はいい加減だと思っている。もうちょっと真剣に、幹部はじめ、岸田総理ももう一回処分のあり方についてはやってもらわないと納得できない。自民党に対して不信。今のままではだめだと思う」
安倍派 菅家一郎 衆院議員
「本当に申し訳ございませんでした。党からの処分に関しては厳粛に受け止めて、原点に戻って頑張って参りたい」
菅家氏は、処分を受け入れると話すが、党の決定に不満がないわけではない。
訂正された収支報告書。
本来、キックバックは、派閥からの寄付として記載しなければならなかったが、菅家氏は自身からの寄付の一部として記載していた。
菅家氏は「不記載ではない」と主張している。
安倍派 菅家一郎 衆院議員
「(派閥から)『記載しないで』みたいなのがあったから。かといって入金しないと裏金になるし、やむを得ず、私の個人名義で(記載した)。不記載とは中身が全然違うわけですから。これを配慮されずに、金額が大きかったから、金額で切られて、このような処分の対象になった。そこは本当に残念ですね」
菅家氏は、自民党として、もっと丁寧に国民に説明すべきだと話す。
安倍派 菅家一郎 衆院議員
「岸田総理と二階先生が別格で、今回何ら処分の対象ではない。第三者的な目で報道を見ると、なかなか(国民の)理解を得られないようなイメージかなと感じます」
食い違う岸田総理の答弁と後援会長の証言 改めて後援会長を取材すると…
岸田総理自身にも解明されていない疑惑がある。
2022年、任意団体「祝う会」が主催したとして開かれた「内閣総理大臣就任を祝う会」。
政治家は政治資金パーティーを開催した場合、政治団体などの収入として政治資金収支報告書に記載しなければならない。
しかし、「祝う会」は任意団体であるため、収入として記載されていなかった。
だが、「祝う会」の代表と岸田総理の後援会長が、同一人物であるため、実態は政治団体の収入だったのではないかという疑惑が持ち上がっている。
2024年3月、後援会長が、報道特集の取材に応じた。
Q.「祝う会」の実態は何?
「祝う会」の代表 岸田総理の後援会長
「実態はないよ、言ってみれば。変な話、全部、岸田事務所でやったといえばやったよね」
Q.岸田総理の事務所にお金が全部行っていたわけですよね?口座から
「祝う会」の代表 岸田総理の後援会長
「そうですよね。それは祝い金としてね、祝儀として。(収入は)1万円会費だったけど900万円弱だったと思うよ。収支報告書をこの間見せてもらった」
Q.どこから?
「祝う会」の代表 岸田総理の後援会長
「岸田事務所から」
放送の翌週の3月25日、この証言について、国会で問われた岸田総理は「パーティーは任意団体が主催した」と答弁した。
これに対し野党の議員は…
立憲民主党 牧山ひろえ 参院議員
「総理は、ご自分の後援会長は総理と矛盾する嘘をついた、わざわざテレビに出てきて嘘をついているというんですか?」
岸田総理
「発言の真意については、私の後援会長でありますので、連絡をとって確認をしたいと思います」
この3日後、後援会長に確認したか問われると…
岸田総理
「確認をいたしました。わたしの事務所として手伝いをさせていただきましたが、主催したのはあくまでもこの政財界の任意団体であると説明させていただいています」
食い違う岸田総理の答弁と、後援会長の証言。
今週、改めて後援会長を取材した。
Q.岸田総理の方から確認の連絡はありましたか?
「祝う会」の代表 岸田総理の後援会長
「いや何もない」
Q.ご自分の前の発言について?
「祝う会」の代表 岸田総理の後援会長
「何もない」
Q.総理は国会で確認されたと答弁していたが?
「祝う会」の代表 岸田総理の後援会長
「それは、そのえーと。その会は手伝ってもらったという意味での確認はあったよ。だから、えーと、あのー、運営にしろ、おー、手伝ってもらった」
Q.どういった内容で確認されたのですか?
「祝う会」の代表 岸田総理の後援会長
「ごめんじゃ。申し訳ないけど、ごめんじゃ」
「祝う会」のパーティーについては、2月に神戸学院大学の上脇博之教授が、政治資金規正法違反にあたるとして、岸田総理や後援会長らを刑事告発している。
さらに広島市在住の男性らも、刑事告発する方針だ。
岸田首相を刑事告発する会 山根岩男さん
「地元の選挙区、地元のところからやっぱり声を上げるっていうのは、上げにくいけれども、そこをやらんと正すことができんという風に思っているんです。おかしいと思ったところで、やっぱり声を上げていく。それで一つずつ正していくというか、その積み重ねというのが大切ではないかなと思います」
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