数時間に渡って同じ所で停滞することで大雨をもたらす「線状降水帯」。この予測情報が、今年東北で初めて宮城県に発表されましたが、全国的に「空振り」や「見逃し」が相次ぐなど、予測の難しさが浮き彫りとなりました。
線状降水帯のメカニズムとは
東北大学 伊藤純至准教授:
「線状降水帯っていうのは、積乱雲が何世代も連なってできる、そういう組織化の仕組みが代表的でバックビルディング型形成と呼ばれています」
気象学が専門の東北大学の伊藤純至准教授です。この日は講義で、線状降水帯の発生メカニズムを学生に説明しました。
東北大学 伊藤純至准教授:
「でき続けるためには発達しやすい環境場、水蒸気の供給プラス上昇流が維持されないといけない」
線状降水帯とは、次々に発生する積乱雲による雨雲が列をなし、数時間に渡って同じ所で停滞することで大雨をもたらす現象です。気象庁は2022年から、線状降水帯が発生すると予測された場合、半日前をめどに「地方ごと」に予測情報を出すようになり、今年からは「都道府県ごと」に細分化されました。
予測情報、初めて宮城に出される
8月11日のtbcニュース:
「県内は線状降水帯が発生して、大雨災害の危険度が急激に高まるおそれがあります」
その予測情報が今年8月、初めて宮城県に出されました。台風5号の接近によるもので東北地方では初の発表でした。
さらにその5日後には、関東の南から北上してきた台風7号の影響で、再び宮城県に出されました。丸森町は台風に近く活発な雨雲がかかると見込まれたため、自主避難所を開設しました。
丸森町総務課 齋藤裕一危機管理専門官:
「台風(7号)は令和元年の東日本台風に近い進路で、線状降水帯の発生も予測されるということでしたので、明るいうちに住民の皆さんの準備ができるように町としては態勢をとり自主避難所を町内8か所に設置した」
予測は「空振り」に…、的中率は何%なのか
星野誠気象予報士:
「丸森町では5年前に、線状降水帯による大雨で大きな被害が出ていて、現在も災害復旧工事が進められています」
2019年の台風19号や、2015年の関東・東北豪雨ではともに県内で線状降水帯が発生し、丸森町では記録的な大雨となりました。
しかし、今年8月の2回の事例では、ともに線状降水帯は発生せず、予測情報は「空振り」となりました。
今年、気象庁は全国で81回の予測情報を発表しましたが、そのうち実際に線状降水帯が発生したのは8回で、的中率はおよそ10%でした。気象庁は4回に1回は的中すると見込んでいましたが、その想定を下回りました。
「空振り」より怖いのは「見逃し」、そのワケは
伊藤准教授は「空振り」の多さに危機感を覚えています。
東北大学 伊藤純至准教授:
「あまりに空振りが多くなってしまうとオオカミ少年的な効果で、予測情報に対して警戒を持ってもらう意識がだんだん薄れてしまうことが心配されます」
一方で、丸森町の担当者は怖いのは「空振り」よりも、予測情報が出されていないのに線状降水帯が発生してしまう「見逃し」だと話します。
丸森町総務課 齋藤裕一危機管理専門官:
「そういった情報がなければ、市町村としても態勢をとるきっかけになりませんし、住民の方も準備をするリードタイムが取れませんので。空振りをおそれて見逃すことのほうが私としては問題があると思っています」
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