ノーベル平和賞の授賞式で、日本被団協を代表し受賞演説を行うのが、92歳の田中煕巳さんです。被爆者の高齢化が進むなか、新しい世代に託したメッセージとは。
■ノーベル平和賞 授賞式 50年ぶり日本が受賞
南波雅俊キャスター:
10日夜に行われるノーベル平和賞の授賞式。日本としては50年ぶり2度目の受賞ということになります。佐藤栄作元首相以来のノーベル平和賞の受賞です。「日本被団協」は1956年に結成された組織です。広島、長崎の被爆者などでつくる団体で、核なき世界を目指した活動を行っている国内で唯一の被爆者団体、全国組織ということになります。
演説という意味では1982年、14歳で被爆をした長崎の被爆者・山口仙二さんが「ノーモア・ナガサキ、ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ヒバクシャ」と、初めて国連で核廃絶を訴えたということもありました。
そして、海外に向けて原爆の残虐さを発信し続け、この「HIBAKUSHA(ヒバクシャ)」という言葉は世界の共通語にもなりました。
ただ、近年の動きです。核を巡る国際情勢、2022年にはロシアがウクライナへの軍事侵攻を始め、プーチン大統領は核兵器の使用を示唆するような発言もありました。さらには、中東イスラエルによるイランの核施設への攻撃の可能性も報じられたというような状況が近年あります。
そんな中で、ノーベル委員会のフリードネス委員長は「今年の受賞が世界中の新たな世代にとって目覚めのきっかけとなることを願っています。それは世界の政治指導者たちへの警鐘でもあります」というコメントもしています。
実際に被団協の田中さんは9日、「ノーベル平和賞を受賞したということは、亡くなっていった先人たち全ての被爆者が受賞したことと思っています。二度と被爆者を作らないために頑張っていきたい」というコメントもしています。
ホラン千秋キャスター:
日本にとっては大変大きな出来事になるのかなとも思いますし、世界的に見ても、この核の脅威、「抑止力」と称して核弾頭の数が増えていったりですとか、様々な脅威というのは常にあるということを考えると、やはり私達もしっかりと考えるタイミングにしたいなというふうに思いますよね。
元競泳日本代表 松田丈志さん:
そう思いますし、これはもう今、我々日本人しか言えないメッセージなんで、やっぱりこれは貴重な声として世界に発信していく必要があると思います。核が実際今世界中にあるのは事実なんで、やはりこの2度と被爆者を作らないっていうこのメッセージは本当に大事なポイントだなというふうに思いますよね。
井上貴博キャスター:
国によって様々な考え方があって、かつてアメリカでは、広島、長崎への原爆投下を正当化する意見が主体的でしたけど、ここ最近は若い世代を中心に原爆投下ってのは何があっても正当化できるものじゃないんだっていう、そういう意見が広がっているのも被団協の皆さんの地道な発信があってこそと言われてます。
大変ご高齢の中、直前まで入院してらっしゃった方もいて、でもここでやっぱりもう1回発信するんだっていう、このメッセージというか、命がけというのは伝わるものがありますよね。
元競泳日本代表 松田さん:
世界に対して力強いメッセージになると思いますし、やはり我々も同じ日本人として注目していきたいですよね。
■ノーベル平和賞 今後の予定は
南波キャスター:
そして日本時間10日午後9時から平和賞の授賞式を予定しています。ノルウェーのオスロ市庁舎です。現地時間午後1時ということです。そしてそのあと、日本時間では明けて午前1時45分からトーチライトパレードも行われ、さらには晩餐会という流れになります。
今回のこのノーベル平和賞に関してはオスロ、ノルウェーなんですけれども、近年、2021年に真鍋淑郎さんが物理学賞、19年にリチウムイオン電池の研究などで吉野彰さんが化学賞を受賞されていますけど、ストックホルムのコンサートホールで近年は行われてきました。
一方で、今回は、オスロの市庁舎で平和賞。平和賞のみがノルウェーで行われるということなんです。
先ほど触れましたこのトーチライトパレード、これは平和賞でしかやっていない平和賞ならではの催しなんですが、平和センターからグランドホテルまで約700mぐらいの距離をそれぞれが松明、つまりトーチライトを持って受賞者を称えながら練り歩くというようなパレードも行われます。
受賞者はグランドホテルのバルコニーから挨拶をするということです。晩餐会も行われますけれども、当然国が違うので内容も変わってきますけれども、例えば、ストックホルムで行われた2023年はメニュー3品だったんですけど、2024年は5品のメニューが用意され、国王や女王そして首相など250人ぐらいのゲストも訪れるということでした。
井上キャスター:
被団協の皆さんとしても、ただ演説で発信するだけじゃなくて、今回は被爆証言をしっかりと話したいんだっていうふうにされてますんで、そういったところもどういうメッセージになるのか。
元競泳日本代表 松田さん:
約20分のスピーチ結構緊張もしてるし、準備もかなりやってるんだというふうなコメントもありましたけれども、緊張するとは思いますけど、長年積み重ねてきた活動のリアルな部分を伝えてほしいなと思いますね。
ホランキャスター:
VTRの中で田中さんが「私達は伝承者で皆さんが継承者です」というお話がありましたけれども、やっぱりときの流れには何人も抗うこともできないですし、命は有限であるということを考えると、本当に貴重なお話を私達も聞かせていただいてるんだという気持ちで聞きたいですよね。
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<プロフィール>
松田丈志さん
元競泳日本代表
五輪4大会出場 4個のメダル獲得
JOC理事 宮崎県出身 3児の父
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