岡山市の中央卸売市場には「ふくふく通り」と呼ばれる商店街があります。かつては賑わいを見せましたが、訪れる人が減る今その「通り」を再生させたい…立ち上がったのは建築家を目指す高校生・大学生たちでした。
「ふくふく通り」商店街「昔はものすごく賑わっていた」
放課後、図面を囲んで話し合う生徒たち。
「岡山市南区にあるふくふく通りです。新しく建て替えた後の図面(案)です」
図面に書かれているのは中央卸売市場内にある商店街「ふくふく通り」。商店街と聞けば大勢の人たちが行き交うイメージですが、この場所は静けさに包まれています。
(砂山祐佳里記者)
「平日の午前中、閑散としたふくふく通りです。かつては週末に行列も出来ていたといいますが、今ではシャッターがしまって、営業していない店もあります。」
青果店や喫茶店など約100店舗からなるふくふく通り。もともとは市場で働く人のための施設でしたが、2009年から一般客にも開放され一躍市民の人気スポットとなりました。あれから15年、ふくふく通りを訪れる人はすっかり少なくなってしまいました。約40年の時を経て老朽化も進み、明るいとは言い難い雰囲気が余計に客を遠ざけているという人もいます。
「お客さんはいないよ。うん、いない。」「昔はものすごい賑わってたんですけど。暗いイメージがあるので、どうしても中々来てもらえない」
建築家の卵たちが「ふくふく通り」再生案を持ち寄る
そんなふくふく通りの賑わいを取り戻すことはできないのか。学生がアイデアを持ち寄ります。
この日、岡山市北区の会場を訪れたのは、建築家の卵たち。岡山建築設計クラブがプレゼンの場を提供、彼らに「ふくふく通り」の再生案を発表してもらおうというのです。中には、店と店との間の壁を丸ごと取っ払おうという斬新なアイデアも。
(プレゼン)
「ふくふく通りは殺風景な壁が売り手と買い手に物理的・心理的な距離を生んでいるように思います。」
参加する10団体中9団体が大学生や専門学校生。そんな中、この日ただ一つの高校生の一団がいました。岡山工業高校建築科の1・2年生です。放課後に集まってその準備に費やすこと約3か月。発表に向け、まず製図班が緻密な設計図を作り上げます。
(岡山工業高校2年生)
「まわりに他にも大きなお店があって、その大きいお店の客を全員とるとかではなくて、全員が共存しあって、食の中心となる施設を作っています」
その設計図を立体的に、組み上げていくのが模型班。壁や柱などのパーツを一枚一枚切り出して組み立てます。かつて児島湾に浮かんでいた島々を再現したいと屋根の上には芝生が。鉄道模型用の芝生パウダーを利用して表現しました。
(岡山工業高校2年生)
「審査員の方も見ますし、いろんな人にも見てもらえるように」
それらをただのハリボテにしないため事業の仕組みを考える専門部隊も・・・それが事業スキーム班です。
(岡山工業高校2年生)
「どういう仕組みでふくふく通りの中の仕事を動かすかとか仕組みを考えています。体験スペースっていうのを作って、そこでお客さんとのつながりを深めようみたいなシステムを考えました」
審査結果の発表、岡山工業高校は?
図面に起こす人、形にする人、事業として動かす方法を具体化する人でワンチーム。去年は高校生ながら優秀賞を獲得しましたが、今年は「プレゼンで最優秀賞を取りたい」と意気込みます。さらに市場を視察し現状を目の当たりにする中で芽生えた「ふくふく通りを何とかしたい」という思いがチームを突き動かします。3か月の成果を引っ提げ、ステージに上がる生徒たち。審査員の建築士のプロたちに持てる限りの力をぶつけます。
「私たちが提案するのは、フードストリート ふくふくです。ここでは食べる、学ぶ、買う、遊ぶの機能を備えた体験型市場になっています。」
「13人でつないだプレゼンのリレー。10分間のステージをやりきりました。」
そして審査結果の発表。次々と受賞校の名前が呼ばれる中、祈るような心持ちで待つ生徒たち。
「日本建築学会奨励賞を受賞したのは、岡山工業高校!」
最高賞から3番目に当たる日本建築学会奨励賞に加え市場賞も獲得するW受賞。最優秀賞には届かなかったものの、栄誉ある結果に輝きました。
(岡山工業高校2年生)
「レベルが高い方々と戦わせてもらえたというか、やらせてもらえて、3位をとることができて、結構自信がつきました」
(岡山工業高校2年生)
「(市場賞は)事業部の方の賞だったので、事業スキームを考えた私としては、この賞が一番嬉しかった」
(岡山建築設計クラブ 海野雅之代表幹事)
「岡山に対しての興味を持っていただく学生さんがより増えれば、また首都圏に就職したとしても、いずれ岡山に戻ってきて岡山で仕事をするということも、あり得るのかなということを期待しています」
建築に青春を賭ける生徒たち。知識や技術を使って地域を、社会をよりよくしたい、その思いが大きく花開く未来がひたむきに打ち込む姿のむこうに見えました。
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