1億5000万円あまりの使途不明金が発覚している山口県の周南市文化財団で、関与したとされる元経理担当の職員の男(67)の裁判。元同僚の男(57)=横領などの罪で公判中=が金を抜き取っていることを知りながら、15年以上不正経理を続け、金の不足を隠し続けたとされる男は、「自分の保身よりも財団のためを思っての行動だった」と動機を語りました。

有印私文書偽造・行使の罪に問われているのは、周南市文化財団の元職員の男(67)です。

起訴状によりますと、男は経理を担当していましたが、2018年度から2021年度までの会計監査で財団の実際の資産が財産目録よりも少ないことを隠すため、日付を書き換えるなどして預金講座の残高証明書を偽造し、会計監査の監事に提出したとされます。また、2021年と22年の会計監査時、社債の残高証明書を偽造し、会計監査の監事に提出したとされます。

周南市文化振興財団の1億5000万円使途不明金問題には、男と元同僚の男の2人が関わったとされています。これまでの裁判で、事件のいきさつが明らかになっていました。

検察側の冒頭陳述によると、男は2005年ごろから財団の金庫などから金が抜き取られていることに気づきましたが「自分が疑われ、責任を問われるのではないか。犯人を見つけ出し、弁償させればよい」などと考え、不正な経理をするようになりました。2007年度末で、2000万円から3000万円ほどが不足していたといいます。

2008年には、財団のイベント企画などを担当していた元同僚の男が、不審な行動をしているところを目撃。男が問い詰めると、金を取ったことを認め「金を借りて返済する」などと答えましたが、その後も金がなくなり続けたということです。実際の資金が少ないことを隠すため、元同僚の男の犯行を黙認して、不正経理を続けていたとしていました。

山口地裁周南支部で18日開かれた裁判の被告人質問で、あらためて「間違いない」と起訴内容を認め、「ご迷惑をおかけして申し訳ない」と語った男。弁護側は、男は財団の支払いのために私財1100万円あまりを充てていて、男自身は一銭も利益は得ていないと明らかにしました。

財団の金の管理は基本的に男1人で行っていましたが、金庫の鍵のありかは職員全員が知っていて、誰でも開けられる状況だったといいます。金の不足を隠し続けた動機を問われると「自分の保身ではなく、財団のためを思ってのことだった」と答えました。男は、金の不足が発覚すれば、財団が市からの指定管理を取り消されるのではないかと考えたとして、事件を公にしないことを独断で決定したということです。また、元同僚への恐怖感もあったと答えました。

15年以上にわたって1億5000万円ほどの金の不足を隠し通したとされる男。次回は12月10日に検察側の求刑が行われる予定です。

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