2023年4月に当時54歳の父親を殺害した罪などに問われている次男と長男の妻の裁判員裁判。11月12日は、次男のスマートフォンを解析した宮城県警の警察官が証人として出廷した。警察官はこう証言した。「『霊媒師JUN』は敦子被告であり、直哉被告と敦子被告は共犯者である可能性が高い」

起訴状などによると、殺害された村上隆一さんの次男・村上直哉被告と長男の妻の村上敦子被告は2023年4月17日未明、宮城県柴田町西船迫1丁目の住宅の玄関で隆一さんを刺身包丁で刺して殺害したうえ、敦子被告の元夫らに依頼し、刺身包丁などを処分させた罪などに問われている。裁判の争点は「2人の共謀の有無」、つまり「敦子被告が殺人に関わったか」という点だ。

これまでの公判で、直哉被告は「霊媒師JUN」という人物とのLINEのやりとりで隆一さんの殺害に至ったことが分かっている。検察側は「霊媒師JUN」は敦子被告だったと主張しているが、敦子被告の弁護人は別人だと主張している。

「霊媒師JUN」は敦子被告、警察が判断した理由は

直哉被告のLINEアプリに残されたあるアカウントとの会話の痕跡。相手はすでに退会済みで、会話も削除されていたが、警察は通信記録などの捜査から、このアカウントこそが「霊媒師JUN」だったと断定した。

村上直哉被告と村上敦子被告

なお、運営会社に問い合わせたものの、会話の中身までは開示されなかったという。

警察官は、「霊媒師JUN」が敦子被告だと判断した理由を列挙していく。

検察:
「『JUN』のアカウントのユーザー情報から分かったことは」
警察官:
「LINEにアカウントを登録するときには、電話番号が必要となる。『JUN』のアカウント登録に使用されていたのは、『敦子被告の実家の電話番号』だった」
検察:
「その後、何を調べたのか」
警察官:
「『霊媒師JUN』のLINE送信に使われた通信回線だ。通信回線の提供事業者に問い合わせ、通信履歴を差し押さえた」

検察:
「通信履歴からは何がわかったのか」
警察官:
「『霊媒師JUN』のLINEは、敦子被告の携帯回線を使って送られていた」
検察:
「携帯回線を使ってとは」
警察官:
「敦子被告のスマホの『テザリング機能』を使っていた」

『テザリング機能』とは、あるスマホの通信回線を使って、別のスマホやタブレット端末をインターネットにつなげる機能である。さらに、「霊媒師JUN」のLINE送信に使用された通信回線はもうひとつあった。

警察官:
「もうひとつ、敦子被告に関わる通信回線があった」
検察:
「敦子被告とどう関係があるのか」
警察官:
「この通信回線は敦子被告の車に搭載されたWiFiの回線だった」

さらなる証拠 防犯カメラが捉えた敦子被告の「ある様子」

さらに警察官は証言を続ける。事件前夜、敦子被告は犯行現場近くのコンビニに立ち寄っていたという。防犯カメラには、敦子被告の「ある様子」が映っていた。

検察:
「他に『JUN』が敦子被告である証拠は」
警察官:
「コンビニの防犯カメラの映像だ。敦子被告が、車内でスマホを操作するところが映っていた。その時間はちょうど、『霊媒師JUN』から直哉被告にLINEでメッセージが届いた時間だった」

検察が提示した防犯カメラのキャプチャー画像には、胸元でスマホのようなものを操作している敦子被告が写っていた。その時、同行していた敦子被告の夫(殺害された隆一さんの長男)はコンビニの店内にいた。

検察:
「敦子被告の夫の店内での様子も調べたのはなぜか」
警察官:
「そのとき夫はスマホでバーコード決済をしている。つまり敦子被告の夫は『JUN』ではないと考えられる」

まとめると、「霊媒師JUN」のLINEアカウントを使っていたのが敦子被告だと警察が判断した理由は大きく次の3つだ。

村上敦子被告

(1)「霊媒師JUN」のLINE登録に使用された電話番号が「敦子被告の実家の電話番号」
(2)「霊媒師JUN」のLINEが「敦子被告のスマホやWi-Fi」を介して送信されている
(3)「霊媒師JUN」から直哉被告にLINEのメッセージが届いた時間、敦子被告がスマホを使用していた

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