ことしの新語・流行語大賞にもノミネートされた「カスハラ」=「カスタマーハラスメント」。顧客による不当な要求や過度なクレーム、暴言など、従業員に対して精神的苦痛や不快感を与える行為を指します。「客」であり、「加害者」である相手に、スタッフ側はどう対応すべきなのでしょうか?実例から考えます。
タクシーの乗客:
「頭悪いんか!お前ほんまに。真っすぐ行けしかいうてなかったやろ!」
運転手:
「ハラスメントですよお客様」
タクシーの乗客:
「お前が動けへんから言うとんじゃ!ほんまによ。ちょっと待て!お前どこの会社じゃ!」
東京都のタクシー会社「葵交通」のドライブレコーダーが捉えた「カスハラ」の瞬間です。乗客の中にはパネルを蹴る人も…
運転手:
「すみません。パネル壊れちゃうんで勘弁してください…」
タクシーの乗客:
「早くしろよ!バカが!」
「葵交通」は従業員を守るため、車内に「カスハラ防止」を呼び掛けるステッカーを貼るなど対策を進めています。しかし、第三者の目が届きにくいタクシー車内のカスハラは、より悪質化していると言います。
業務に関係ない話を延々と…
帝国データバンク長崎支店の調査では、県内企業の18.9%が、直近一年以内にカスハラの被害が「ある」と回答し、全国で8番目に高い結果となりました。カスハラは行政窓口、長崎市役所でも深刻化しています。
長崎市総務部人事課 高屋健一郎人事係長:
「カスハラを受けたと感じた職員が、(回答した)全体の25%いるということで、かなり思っていたより多いと感じています」
市役所が、ことし6月に初めて行った職員へのアンケートでは、回答した2109人のうちおよそ4分の1に当たる540人が、「直近3年間にカスハラを受けたと感じた」と回答しました。
実際にあった事例では・・・
「市長に会わせろ!」
「殴りこみに行くぞ!」
ーなど、職員に対する威圧や暴言。また、「SNSに掲載する」と脅されたり、1時間以上業務に関係がないことを喋り続けた事例もあるということです。
長崎市総務部人事課 高屋健一郎人事係長:
「カスハラを未然に防止するために『職員の名札』の表示を、フルネームから名字だけに変更しております」
「警察OBの方をフロアに配置したり、ハラスメント(カスハラ含む)の相談窓口の設置や職員研修も実施しています」
長崎市では今後、「カスハラ」に対するマニュアルの作成や、電話の際に「録音する」旨の自動アナウンスを流すなどの対策を講じる予定だということです。
「(カスハラが)深刻な場合は『健康不良』や『休み』に至ることも考えられますので、喫緊の課題です」
切伝(きりでん)マニュアル
企業でもカスハラ対策が始まっています。アミュプラザ長崎などを運営するJR長崎シティは「カスタマーハラスメント対応指針」を作成し、カスハラがあった場合は警察や弁護士らと連携して対処するとしています。
また首都圏では、ルート案内などを行う「首都高お客さまセンター」で去年から「切電(きりでん)マニュアル」が運用されています。
「切電」とは、30分以上同じ内容を繰り返し主張される場合などは、通告の上電話を切るというものです。実際にことし8月までに22件の電話を切ったということです。
また東京都ではカスハラ防止条例が全国で初めて成立し、来年4月1日から施行されます。
こうした対策が進む一方で、町の人からは「カスハラ」と正当な「クレーム」の線引きに悩む声も聞かれました。
カスハラとクレームの境界は?
50代女性(保険会社勤務):
「『バカ』とか言われるのはありますね。自分の納得されないお客様だったら結構言われますね」
40代男性(自営業):
「電話口で2時間ほど暴言を吐き続けられた経験がありました」
30代女性(以前コールセンター勤務):
「1時間ぐらいお客様からクレームというか、今でいうカスハラですよね。それはありました。」
Qカスハラと正当なクレームの違いって分かりますか?
「なんだろう同じように括ってましたね。分からないです。」
70代男性:
「線引き難しいですよね」
また、カスハラ対策が進むことで正当なクレームも言いにくくなるのでは?という意見も。
50代女性(パート):
「自分の意見としてはこういうことが言いたいけどもカスハラに引っかかっちゃう(可能性がある)って考えると言えないのかな。」
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