学費も生活費もかからない。台湾の大学が驚くような条件で日本人留学生を募集しています。資金を提供したのは、半導体の受託製造で世界最大手、熊本県に工場を建設した台湾の「TSMC」です。どんな狙いがあるのでしょうか。

農業が盛んな地として知られる、台湾中部の雲林県。雲林科技大学では、スマートフォンから生成AIまで、幅広い分野で使用される「半導体」のエンジニア育成をめざし、専門的な授業が行われています。

日本人留学生の眞下彩音さん(19)は今年3月に日本の高校を卒業し、9月からこの大学で学んでいます。

この大学を選んだ理由とは。

雲林科技大学1年 眞下彩音さん
「金銭面で心配することなくチャレンジできたので、そこが良い点だったかなと思います」

眞下さんが在籍するのは日本人を対象にした留学コースで、4年間の学費200万円以上が無料となります。さらに、毎月の生活費としておよそ5万円が支給されるなど、破格の待遇で学ぶことが出来るといいます。

その費用を負担しているのが、台湾の「TSMC」です。

雲林科技大学 蘇純絵 副校長
「キャンパス内ではTSMCの3つの半導体コースが運営されていて、日本の学生が半導体を学びに来ることを期待して、このような半導体の人材育成計画を企画しました」

このコースは卒業後、TSMCの入社試験を受けることが必須条件となりますが、入社できなくても補助を受けた授業料や生活費を返す必要はありません。

なぜここまで至れり尽くせりなのか。台湾経済の専門家は。

神奈川大学経済学部 川上桃子 教授
「台湾ではエンジニア不足がかなり深刻になっています。少子高齢化の影響がありますし、この10年で理工系の四大卒が約17%減っている」

台湾のハイテク産業が急成長・急拡大する一方、少子化は止められず、人材確保のためなら大した負担ではないと考えているようです。

さらに、日本人を選んだ点については。

神奈川大学経済学部 川上桃子 教授
「一番大きいのは熊本に工場を建設しているということ。熊本で即戦力として活躍する日本人の人材をTSMC自身が育成していくということだと思う」

半導体をめぐっては、中国による軍事転用を警戒し、アメリカが中心となって輸出規制を展開。TSMCも、中国とのビジネスが一部制限されています。

一方、日本向けの売り上げは全体の6%にすぎませんが、大胆な“青田買い”は投資先として日本を重要視していく姿勢の表れといえそうです。

そんな制度の“第一号”となった眞下さんですが…

雲林科技大学1年 眞下彩音さん
「周りの人が『別に気負わなくていいんだよ』ってすごく言ってくれるので、プレッシャーとかですごく苦しくなるということはないです。台湾と日本の懸け橋のような存在になれたらいいかなと思っています」

来年9月の新学期には90人の日本人を迎えたいとしていますが、大盤振る舞いともいえる留学制度は半導体業界にどのような変化をもたらすのでしょうか。

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