11月5日投票の米大統領選が最終盤を迎える中、民主党のハリス副大統領は「挑戦者」、共和党のトランプ前大統領は「本命候補」をそれぞれ自称し、対照的な言動で支持者を鼓舞している。世論調査では接戦が続き、互いに決め手を欠く中、激戦7州を中心に最後の追い込みを図っている。
ハリス氏は挑戦者を意味する「アンダードッグ」と称して、民主党員の油断を戒め、支持呼びかけを加速するよう求めている。選挙戦からの撤退を決めたバイデン大統領に代わって、8月に党候補に決定。高齢のバイデン氏に不安を感じていた党内の熱気を呼び覚まし、支持率も一気にトランプ氏を追い抜いた。
だが、9月以降は伸び悩んでいる。陣営は危機感を募らせ、党員から人気のあるオバマ元大統領夫妻やクリントン元大統領も応援に投入した。ハリス氏は「1票でも多く獲得するために選挙運動をしなければ。党派や居住地は関係ない」と強調し、無党派層の取り込みや共和党穏健派の切り崩しを図っている。
一方、トランプ氏は自身に都合の良い世論調査の結果を引用するなどして「大差でリード中だ」と誇張している。そのうえで、過去の選挙と同様に不正があり得ると主張し、「不正ができないほど圧倒しよう」と支持者に呼びかけている。
政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の各種世論調査の集計(18日時点)によると、全米での支持率はトランプ氏が47・9%で、ハリス氏(49・3%)に僅差で負けている。しかし、激戦7州に限ると、トランプ氏が逆に僅差でリードしている。
いずれも誤差の範囲内だが、過去2回の大統領選でトランプ氏は事前の世論調査の支持率よりも得票を伸ばした経緯があり、「強気」を維持している。
選挙戦では有利な情勢でも「接戦だ」と強調し、陣営の引き締めを図る手法が一般的だ。一方で、優勢とされる候補にさらに多くの票が入る「バンドワゴン効果」や、劣勢とされる候補に同情票が集まる「アンダードッグ効果」もあるとされ、どのような広報戦略が最善なのかが一概に言えない面がある。【ワシントン秋山信一】
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