イラン大統領選の決選投票(5日実施)は6日、開票が行われ、イラン内務省によると、米欧との対話に前向きな改革派のペゼシュキアン元保健相(69)が初当選を決めた。識者に話を聞いた。
日本エネルギー経済研究所・中東研究センター長の坂梨祥氏
イランの指導部は、大統領選での投票率をもって国民の体制への支持率とみなしている。最高指導者ハメネイ師らが繰り返し投票を呼びかける中、国民がどう反応するか注目していた。そして、第1回投票の投票率は約40%で、革命以来、史上最低となった。
今のイランでは、米欧の経済制裁や国際社会における孤立で社会不安が高まり、女性に対するヘジャブ(スカーフ)着用の強制などで抗議行動も見られる。「票を投じないことで抗議の意思を示そう」との呼びかけもネット交流サービス(SNS)で見られた。
決選投票では投票率が50%近くに上昇したものの、体制への不信感が全面に現れる結果となった。改革派のペゼシュキアン氏は経済立て直しには「制裁の解除が不可欠」と主張して当選した。現状路線の維持を訴える保守強硬派との違いを明確にし、変化を望む国民の支持を得た形だ。
イランでは国の方針を最高指導者が決めるため、大統領の権限は限られる。そのため、ペゼシュキアン氏の主張が実現されるのか懐疑的な見方もある。だが、選挙結果を受けて、イラン指導部は国民の抗議の意思を感じているはずだ。制裁解除を目指すとの主張を頭ごなしに否定するわけにはいかないだろう。
ペゼシュキアン氏は「最高指導者の意向は重要だ」とも訴えてきた。最高指導者や保守強硬派が納得する形で、核合意の再建に関する米国との協議を模索するとみられる。【聞き手・松本紫帆】
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