シリーズ「現場から、」。ウクライナ侵攻が長期化するなか、ロシア軍はアジアなどから外国人を大量に動員しています。騙されて戦地に送られたというインド人男性の帰国を待つ家族を取材しました。

インド人戦闘員が投稿した動画
「戦争に行きたくない。銃の扱い方さえ知らないのに、(ロシア軍は)我々を前線に立たせようとしている」

SNSで拡散した軍服姿のインド人たちの動画。悲痛な表情を浮かべる小柄な男性は、23歳のガガンディープ・シンさんです。

彼らはなぜ、ロシア軍に加わることになったのか。私たちは、ガガンディープさんの住まいがあるインドのパンジャブ州を訪ねました。

父親のバルヴィンダルさんです。

ガガンディープさんの父親 バルヴィンダルさん
「息子はとても勤勉で教養のある子です。息子がいない生活がとても寂しい。早く会いたい」

ガガンディープさんらは去年12月、観光目的でロシアに入国。ところが、旅行業者に騙されて隣国・ベラルーシに連れていかれ、不法入国だとして当局に拘束されたといいます。

ガガンディープさんの父親 バルヴィンダルさん
「刑務所に10年入るか、ロシア軍で1年働くかを選べと脅され、息子たちは恐怖を感じて入隊の書類にサインしました」

10日間ほどの軍事訓練を受け、ウクライナ東部の前線に送り込まれたというガガンディープさん。ウクライナ軍の攻撃にさらされる戦地の状況について、電話で父親にこう話していました。

ガガンディープさんの父親 バルヴィンダルさん
「息子が乗った車両の前後にいた戦車は(ドローンで)攻撃され、爆発したと。戦場では彼の身に何が起きてもおかしくないし、とても怖い」

ウクライナ侵攻後、5万人を超える兵士が死亡したとされるロシア軍。ガガンディープさんらのほかにも、高収入の仕事があると誘われ、インドから出稼ぎ目的で渡った多くの若者が戦地に送られているとみられ、4人のインド人が死亡したということです。

また、スリランカでも。

スリランカの副国防相
「(ロシア軍に雇われた)スリランカ人16人が(ウクライナで)死亡したという情報を確認しています」

アジアやアフリカの途上国などからリクルートされたり、強制的に動員されたりした人は数万人規模に上るとの観測もあり、イギリス国防省は「ロシアが兵士の損失を補うために、グローバルサウスの国々で募集活動を拡大するだろう」と分析しています。

ガガンディープさんらの動画
「一刻も早く我々をここから助け出してください」

インド政府はロシアに対し、ガガンディープさんらの帰国を働きかけていますが、彼らは今も戦地に取り残されたままです。

ガガンディープさんの父親 バルヴィンダルさん
「妻は恐怖のあまり、精神的に不安定な状態になってしまいました。私は、インドとロシアは良き友人だと思っていましたが、なぜこんなにひどいことをするのですか。戦争を早く終わらせて息子を返してほしい」

父親は毎日、最愛の息子との再会を祈り続けています。

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