戦術ミサイルの視察をする金正恩(5月14日、場所不明) KCNA via REUTERS
<韓国に対する最近の数々の挑発行為とあわせて、朝鮮半島の軍事的な緊張の拡大を示す動きとみられている>
最近撮影された衛星写真で、北朝鮮が韓国との間の幅4キロメートルの非武装地帯(DMZ)の境界に沿って、長さ2.9キロの細長い土地を整地していることが明らかになった。これは、朝鮮半島のさらなる緊張拡大を示すものだ。
【マップ】非武装地帯、聖地前と整地後
地球観測衛星データを提供するプラネット・ラボから本誌が入手した画像によると、ここ数週間で、新たに整地された土地が少なくとも4カ所あることがわかった。そのうちの1カ所は明らかに北朝鮮の国境のフェンスを越えて非武装地帯にまで広がっている。
次のページの上の画像は今年6月のもので、黄色い枠の中が整地された土地だ。ページ下の4月下旬の時点では草木に覆われていた。現在は、整地された土地が、非武装地帯内に約800メートル以上伸び、韓国の高城統一展望台近くの山の尾根の方向に続いている
北朝鮮の動きが最新の画像で明らかになる前から、北朝鮮軍が非武装地帯付近のいくつかの監視所で新たな陣地を建設しているということが、すでに報じられていた。韓国のニュースサイト、ザ・ファクトが公開した写真には、約30人の兵士が丘の上にある既存の国境警備隊に新しい砦を作っている様子が写っており、その動きは川向うの韓国坡州市炭県面から見ることができた。
だが、最新の画像からは、工事の範囲が以前の報道よりも広範囲に及んでいることがわかる。
北朝鮮軍の行動が容易に
ジョージ・ワシントン大学のイマニュエル・キム准教授は本誌に、整地の理由のひとつは、非武装地帯全体の見通しを良くするためだろうと語った。非武装地帯の大部分は森林や灌木に覆われている。この地域の植生を除去すれば、北朝鮮軍がこの地域をより効果的に監視できるようになる。
「開けた土地は、反対側の動きや活動を発見しやすくなる。軍人や車両の移動が容易になることも、大きな利点だ」と、キムは本誌に語った。「土地が整地されていれば、軍事行動や緊急事態が発生した場合、より迅速で効率的な動員が容易になる」
非武装地帯内での軍事活動は、朝鮮戦争(1950~53年)を終結させた休戦協定によって禁止されているが、両国ともに、この協定に「何度か」違反してきた、とキムは言う。
北朝鮮が国境付近で行った新たな活動の背後に潜む動機は不明だが、韓国に対してはこのところ、連続して新たな攻撃を仕掛けている。この1週間、金正恩総書記率いる北朝鮮政府はGPS妨害攻撃、ミサイル発射、ゴミや廃棄物を詰めたゴミ風船を韓国に送り込む、といった作戦を展開してきた。
A series of unusual North Korean provocations
— Ian Ellis (@ianellisjones) June 7, 2024
--GPS jamming attacks for 5 days in a row
--Salvo launch of 18x missiles in "show of force"
--Sent nearly 1,000 balloons filled with trash & waste toward Seoul
--Installing mines, reinforcing fences, & moving heavy equipment in DMZ pic.twitter.com/wA4CCurStu
タバコの吸い殻や糞尿などを詰めたゴミ風船は、ソウルをはじめ人口密度の高い韓国の北部地方全域に着陸した。
尹錫烈大統領率いる韓国政府は6月4日、北朝鮮による「継続的な挑発行為」を非難し、2018年に前政権が南北の緊張緩和を目指して北朝鮮と結んだ軍事合意の効力をすべて停止することを正式に決定した。そして、北朝鮮による挑発行為を理由に、北朝鮮との陸と海の国境で「すべての軍事活動」を再開すると発表した。
「この挑戦的なアプローチは、日米韓の最近の合同軍事演習に象徴される韓国のこの挑戦的なアプローチは、重要な政策転換を示している」と、キムは言う。「北朝鮮にしてみれば、この3国間の軍事協力は前例がないもので、大きな脅威だ」
【マップ】非武装地帯、聖地前と整地後
2024年6月 Source: Planet Labs
2024年4月 Source: Planet Labs
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