ヨルダンの首都アンマン上空を通過するイランの無人機とみられる飛翔体=2024年4月14日、ソーシャルメディアに投稿された動画から・ロイター

 イランによるイスラエル攻撃を巡り、ヨルダンの動きが議論を呼んでいる。パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘を巡り、アラブ国家としてイスラエルに対する批判を強めていたにもかかわらず、イランの無人機を領空で迎撃し、イスラエルを支援する形となったためだ。ヨルダンはイスラエルと中東戦争を戦った経緯があるだけに、イスラエルでは歓迎ムードが漂うが、イスラム圏の市民の間には疑問を呈する声もあるようだ。

 「ヨルダンはイランの無人機や航空機が領空に侵入すれば、撃ち落とす用意がある」。ロイター通信などによると、イランが多数の無人機を発射したと報じられた直後の13日夜、中東の治安関係者はこう語り、ヨルダン軍が迎撃態勢を取っていることを明らかにした。

 一方、イラン軍関係者は「ヨルダンの動きを注視している。(イスラエルを防衛する)行動があれば、彼らが次の標的になる」とけん制。だが、ヨルダンは領空を通過したイランの無人機の一部を迎撃した。ヨルダンのサファディ外相は14日、ヨルダンを標的にするとのイラン側の発言が報じられたことを受け、イラン大使を呼び出して抗議したという。

 ヨルダンはイスラエルと4度にわたる戦争を戦い、1967年の第3次中東戦争ではヨルダン川西岸と東エルサレムをイスラエルに占領された。200万人を超えるパレスチナ難民を含め、人口の約7割がパレスチナ系住民とされる。

 ただ、94年にはアラブ諸国としてはエジプトに続き2番目にイスラエルと国交を正常化。米国とも友好関係を維持しており、米軍も過激派組織「イスラム国」(IS)掃討を支援するために駐留を続けている。

 今回、迎撃に参加したのは、米国などとの関係を重視したほか、イスラエルで被害が拡大すれば紛争が拡大し、自国も巻き込まれる恐れがあったためとみられる。米紙ニューヨーク・タイムズによると、ヨルダン政府は14日の声明で、迎撃した無人機やミサイルについて「人口密集地の住民を危険にさらさないために実施した」とし、あくまでも自衛のためだったと強調した。

 ヨルダンによる迎撃は、イスラエルでは「熱烈に歓迎された」(タイムズ・オブ・イスラエル紙)と報じられている。一方、国営イラン通信はX(ツイッター)に「ヨルダンはイスラエルの空を直接防衛した最初のアラブ国家となった」と投稿。ヨルダンのアブドラ国王がイスラエルの軍服を着ているようなミーム(ネタ画像)も一部で出回った。【カイロ金子淳】

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