雨に打たれながら、議会の解散と総選挙の実施を発表するスナク TOBY MELVILLEーREUTERS
<インフレ緩和を背景に選挙日程を決断、14年ぶりの政権交代を回避できるか>
5月22日の午後、リシ・スナク英首相は雨の首相官邸前で演説を行い、その日駆け巡った噂──予想よりも早く総選挙に突入する──を正式に表明した。選挙までの動きを予測しよう。
【動画】リシ・スナク英首相の演説
■選挙はいつ行われるのか。
7月4日に決定した。イギリスでは下院議員の任期である5年に1度総選挙が行われる。スナクは来る2025年1月末までに総選挙を行う必要があったが、今回の突然の発表まで、秋に実施されるというのが国内でのもっぱらの予想だった。
スナクはかねてから総選挙は今年後半に行うと発言していたものの(確かに7月は後半ではある)、これほど早期の実施は驚きをもって迎えられた。与党保守党議員の多くも憤慨しているとか。
■スナクはなぜこのタイミングで選挙を決断したのか。
第2次大戦以降で「最も困難な」時代のイギリスを率いることができるのは、自分と保守党しかないというのがスナクの演説での主張だ。しかし労働党は、リズ・トラス前首相の大型減税策が引き起こした市場の混乱や公共サービスの悪化など、イギリスが抱える問題の多くは保守党政権が生み出した、と指摘するだろう。
スナクが選挙日程を打ち出したのは、政府が待ち望んでいたインフレ率低下の数字が発表された日でもあった。
■解散後はどうなるのか。
スナクは既にチャールズ国王に議会解散の許可を得ており、5月30日に議会は解散する。その日以降、厳密には国会議員は存在せず、立候補することを決めた現職議員たちは候補者となる。650の選挙区で議席をめぐっていつものように戸別訪問が繰り広げられ、党首たちは主要な選挙区の応援に駆け付けるだろう。
テレビ各局はテレビ討論の回数や放映時期について交渉を始めているはずだ。
■政権交代はあるか。
この数年間の英政治において「絶対はない」ことは分かっているが、世論調査では労働党が保守党を圧倒的にリードしている。シナリオどおりなら、キア・スターマー労働党党首が首相になる。そうでないとしたら、世論調査は当てにならないということだ。
保守党は2010年以降政権を維持しているが、10~15年は自由民主党との連立政権だった。15~16年に単独で政権を握ったデービッド・キャメロンは、国民投票でブレグジット(イギリスのEU離脱)推進派が勝利したことを受けて辞任した。
キャメロン以後、首相の座に就いたのは4人。テリーザ・メイ、ボリス・ジョンソン、トラス、そして22年10月に就任したスナクだ。スナクは自分の「フレッシュさ」を売り込むとともに、大型減税は誤りだとトラスに警告したことを強調するだろう。
■サッカーが全てを決めるという見方があるのはなぜか。
総選挙が行われる7月4日は、4年に1度のサッカーの欧州選手権(EURO2024)の真っ最中だ。スナクが国民のお祭りムードに乗じて形勢逆転を狙っているとみる向きもある。
スナクも賭けであることは承知だろう。前回サッカーの国際大会中に総選挙が行われたのは、1970年のこと。ハロルド・ウィルソン率いる与党労働党は、ワールドカップ(W杯)の準々決勝でイングランドが西ドイツ(当時)に敗れた4日後、敗北した。
Christopher Kirkland, Senior Lecturer in Politics, York St John University
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UK Prime Minister Rishi Sunak's full General Election announcement | BBC News
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