イスラエルとイスラム組織『ハマス』の衝突から半年。イスラエル軍が突如、ガザ南部の都市ハンユニスから地上部隊を撤収させると発表しました。後ろ盾となっていたアメリカが即時停戦を強く求めるなか、撤収に踏み切った真意はどこにあるのでしょうか。

■衝突から半年

ハマスが襲撃したフェスの跡地では7日、追悼式が行われました。1200人が亡くなり、約100人の人質がいまだ捕らわれたままです。一方で、イスラエル軍の侵攻で殺害されたガザの人たちは3万3000人を超え、戦闘の終わりは見えていません。そんななか、イスラエル軍はハンユニスからの撤収を発表しました。

イスラエル ガラント国防相
「ハマスはガザ地区全域で軍事組織としての機能を停止した。我が軍はハンユニスから撤退し、次の任務に備える」

大規模衝突から半年、大きな転換点を迎えようとしています。

■「次の作戦への準備」部隊再編か

イスラエル南部ニリムでは7日、続々と軍用車両がガザ地区から出てきました。イスラエル軍が去年末から地上作戦を行っていたハンユニスのすぐ東側です。

CNN ロバートソン記者
「第98師団の戦車群が見えます。土曜から日曜の未明にかけ、イスラエル軍が撤収していきました」

イスラエル軍は、南北を横断するネツァリム回廊に数千人規模の一個旅団を残し、ガザから一時的に撤退することを決めました。

CNN ロバートソン記者
「この撤退は、小休止を経て今後の作戦に備えるためとしています。カイロで行われている停戦協議に大きく影響するかもしれません」

ネタニヤフ政権は、南部ラファへ本格侵攻する方針を変えてはいません。今回の撤退は部隊の再編成とみられています。

イスラエル ネタニヤフ首相
「私たちは完全勝利し、人質を全員取り戻し、ラファを含むガザ地区全域でハマスを排除し、再びイスラエルの脅威とならぬようにします」

ただ、イスラエル軍をめぐっては、即時停戦を訴えてきアメリカが民間人保護を強く求める“最後通告”を出したばかりです。軍事援助の見直しまで取り沙汰されているなか、ラファへの侵攻はそう簡単ではありません。

アメリカNSC カービー戦略広報調整官
「今のところ、撤退が何を物語っているのかを正確に知るのは難しい。これは単なる発表にすぎない」

■変わり果てた街に住民一時帰宅

イスラエル軍が一時撤退したハンユニス。避難していた人たちにの前にあるのはガレキの山でした。

ハンユニス住民
「家は無事か見にきたら、なくなっていた。何とか服は見つかったので、それを着ます」


■アメリカ国内で批判“撤退”に影響は

アメリカの政治・外交に詳しい、上智大学の前嶋和弘教授に話を聞きました。

(Q.アメリカがイスラエルに対して強い警告をしたことが、軍の撤収に影響した可能性はありますか)

前嶋和弘教授
「今、イスラエルに影響を与えられるのはアメリカだけ。ガザの病院への攻撃や、民間の犠牲者が増えてきて、アメリカ国内の世論もイスラエル批判が強まった」

さらにその批判が強まるターニングポイントになった出来事があります。

今月1日、ガザを支援する食糧支援NGO『ワールド・セントラル・キッチン』のアメリカ国籍を持つ人を含む外国人スタッフ7人が、イスラエル軍の空爆を受けて死亡しました。

そのすぐ後、今月4日にネタニヤフ首相が電話会談を行った、バイデン大統領は「民間人保護に向け“即時停戦”が不可欠。アメリカのガザ政策は、今後のイスラエルの対応で決まる」と警告しました。

前嶋和弘教授
「バイデン大統領も世論を無視できず、イスラエルへの主張を強めた。イスラエルも、アメリカからの武器支援がなければ戦闘継続が難しいので、アメリカの主張を受け入れたのでは」

アメリカの世論調査を見てみると、「イスラエルの軍事活動を支持するか」という質問に対し、去年11月は「支持:50%」「不支持:45%」でしたが、今年3月は「支持:36%」「不支持:55%」と変化しています。

(Q.アメリカはこのままイスラエルを止めることはできますか)

前嶋和弘教授
「このまま民間人の犠牲が増え続ければ、バイデン大統領は『それを許した人物』として汚名を着せられる。さらに、大統領選への影響があるため、できるだけ早く戦闘を終わらせたい。ポイントはラファ侵攻。バイデン政権は『ラファ侵攻は絶対に許さない』というスタンス。今後は武器支援停止も視野にあるのでは」

(C) CABLE NEWS NETWORK 2024

▶「報道ステーション」公式ホームページ

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。