背中を押されて 深い傷を抱えながらジャーナリストとして訴え続ける SARA CINCUROVA

<性暴力は被害者の心を奪い、沈黙させる。デジタル化する性の搾取に厳重な処罰を>

私はスロバキアとチェコで、精神疾患とアルコール依存症と家庭内暴力で荒廃した家庭に育った。両親はほとんど家にいなかった。

6歳から17歳になるまでずっと、家族の友人から深刻な性的虐待を受けていた。誰も彼を止めなかった。

彼が家に来るたびに、耐え難い不安と悪夢に襲われた。忘れたくても忘れられない恐怖の記憶。10代のときに裸の写真を撮られた日のことは、今なお最も暗い記憶の1つだ。

現代では、女性の体を搾取することがかつてないほど簡単になった。AI(人工知能)を使ったディープフェイクのヌード画像やポルノが大流行して、世界中の女性が私と同じように痛切なトラウマに直面する可能性がある。

子供への性的虐待とAIによる性的搾取には、共通点がある。どちらも犠牲者の同意なしに、十分な理解や知識がないまま行われるのだ。

子供に対するこの種の残酷な行為は、癒やすことがほとんど不可能な心の傷を残す。私も傷が癒えるまで、とても長い時間がかかった。

自分が耐え続けた、想像を絶するシーンが何度もフラッシュバックした。夜は悪夢にうなされ、この悪夢は覚めないのかもしれないと思った。

それでも、やがて悪夢は収まった。私はジャーナリストになり、世界でも問題の多い地域を取材して、人権侵害の現実を多くの人に届けている。リビアでレイプ被害者にインタビューをして、ウクライナの前線で女性や子供に対して行われている戦争犯罪の記事を書きながら、自分なりの癒やしを見つけてきた。

サイバー性暴力の恐怖

そして今、私は初めて、自分自身の証言を報道に使っている。何よりも重要なのは、虐待をやめさせて、加害者を罰することだ。

サイバー暴力とサイバーポルノを犯罪とする新しい法律の検討も始まっているが、私は性的虐待のサバイバーとして、もう待つことはできないのだと強調したい。多くの国で法律の空白が立ちはだかり、サイバー暴力が実際に確認されても、告訴されないケースはたくさんある。

女児の体は物ではない。そして性的虐待の不名誉は、被害者ではなく加害者が負うべきだ。加害者に対する法的措置は、即座で、かつ重大なものでなければならない。

性的暴力は、女性の心を傷つける最も悪質なやり方の1つで、その傷は永遠に残る場合もある。そして、戦争の武器にもなる。サイバーポルノを、女性を残忍に扱い、トラウマを植え付け、黙らせる新たな手法にしてはならない。

長年にわたり世界中の女性に対する暴力を取材してきた私は、自分の経験を語ってくれた勇気ある女性たちに背中を押されて、自分も語ろうと思えるようになった。

地中海を渡れるはずもないボートでヨーロッパを目指して溺れた人々の救助活動を取材していたときのことだ。

NGOの船内で会った難民のフィリーは、リビアで集団レイプされ、その一部始終を男が撮影していたという。彼女は自分の痛みと恐怖にもかかわらず、人々に知ってほしいと言った。「ほかの女性や少女を守りたいから」

私が声を上げることで、誰か1人でも女性に希望を与えることができ、デジタル空間における女性の権利を向上させることにつながるなら、それだけで大きな成果だ。

サラ・チンキュロバのX(旧ツイッター)

So nice to see my story published in Japanese! pic.twitter.com/hHgWZEKit2

— Sara Cincurova (@Sara_Cincurova) May 21, 2024

 

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