アフリカ民族会議(ANC)の総選挙での得票率推移

 南アフリカの総選挙が29日、投開票される。かつてネルソン・マンデラ氏(2013年に死去)が率い、アパルトヘイト(人種隔離)終了後に一貫して政権を担ってきた与党アフリカ民族会議(ANC)は支持率が低迷。民主化から30年の節目の年に、初めて国会で過半数割れする公算が大きくなっている。

 仏調査会社「イプソス」による4月の世論調査では、ANCは支持率約40%で第1党を維持しているものの、前回選の同時期(57%)と比べて大きく支持を落としている。白人や、混血グループ「カラード」を支持基盤とする「民主同盟」(DA)が22%で2位。極左的な主張で黒人の間で支持を集める「経済的解放の闘士」(EFF)や、ANCを離れたズマ前大統領が率いる新党「民族の槍(やり)」(MK)が続く。

 南アでは1990年代まで、少数派の白人が政治や経済などさまざまな面で黒人を差別するアパルトヘイトが続いた。94年に初めて全人種が参加して行われた民主的な総選挙でANCは6割超を得票して圧勝し、マンデラ氏が大統領に就任。以降、5代にわたって政権を担ってきた。

道ばたに張られた各政党のポスター=南アフリカの首都プレトリアで2024年5月16日、AP

 だが、歴代政権下で汚職や腐敗が深刻化。白人と黒人の間の経済格差が縮まらないうえ、黒人同士でも格差が広がり、国民の不満が高まっている。

 南アでは総選挙後、議員の互選により大統領を選ぶ。ANCは過半数を取れなかった場合、現職のラマポーザ大統領を中心に少数政党と連立交渉に入る方針だが、政権基盤の弱体化は避けられない情勢だ。【平野光芳】

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