モスクワ州ジューコフスキーの上空を飛ぶSu-57(2021年) Photo by Mihail Siergiejevicz / SOPA Imag/Sipa USA
<ウクライナがF16を手にする日がいよいよ近づいてきた。ロシアの最新鋭機Su57から制空権を取り戻せるか>
ウクライナは、西側支援国から供与されたF-16戦闘機が前線に届くのを待ちわびている。ウクライナは、2年以上にわたるロシアとの過酷な戦争を経て、「ファイティング・ファルコン」の愛称を持つこのアメリカ製戦闘機こそが、ロシアの航空優勢に対抗するカギになる、と期待をかけている。
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数カ月におよぶ外交圧力の末、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はついに、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のデンマーク、オランダ、ベルギーからF-16戦闘機の供与を受けた。アメリカと同盟国は協力し、4月はじめからウクライナ軍パイロットにF-16の操縦方法を訓練してきた。機体自体も、今後数週間のうちにウクライナに届けられるとみられている。ゼレンスキーは、ロシア軍と「同等の戦力」を実現するには、120〜130機のF-16が必要だと述べている。
ロシア側で迎え撃つ戦闘機はSu-57だ。F-16が信頼性と多用途性を備える一方、Su-57の高度なステルス性能は、手ごわい障壁となって立ちはだかるだろう。
Su-57は、ロシアの第5世代ジェット戦闘機であり、高度なステルス技術、3Dの推力偏向ノズルを備えたエンジン、そして幅広い兵器搭載能力を誇っている。
ロシアの軍事資料によれば、Su-57は、高度6万フィート近くの上空で「音速の2倍以上」の速度で飛行できる能力を持ち、航続距離は約2900キロを超える。
兵装としては、レーダー誘導、あるいは赤外線誘導(熱検知)の空対空ミサイル、無誘導の空対地ロケット、通常爆弾、クラスター爆弾、30ミリ口径で銃弾を発射する航空機関砲が搭載できる。
NATOのコードネームは「重罪犯」
2基のエンジンを持つこのステルス戦闘機は、ロシアの防衛産業大手スホーイ社によって、2000年代初頭に開発された。そのルーツは、冷戦時にまでさかのぼる。当時、ソビエトは新世代の戦闘機が必要だと判断した。「Su-27」や「MiG-29」からなる当時の航空部隊のあとを継ぎ、前線での戦術的な作戦を実行する役割を担う戦闘機だ。
だがSu-57は、製造の遅れや、性能面での問題に直面した。特に、エンジンとステルス性能については、問題が顕著だった。一部の軍用航空機専門家は、Su-57の丸いエンジンノズルは外から視認しやすく、レーダーによって検知される可能性が高いと指摘する。このため、ステルス性能が低下する。
このように性能面で物足りない点はあるものの、Su-57(NATOのコードネームでは、「重罪犯」を意味する「フェロン」)は、F-16より優れた点もいくつかある。防衛関連情報の専門誌「ナショナル・インタレスト」の報道によると、第5世代の「フェロン」は、地上レーダーとの連係が可能だという。これにより、第4世代と比べて、最初のミサイル発射が速いというアドバンテージがある。
一方、アメリカのF-16は、長きにわたる輝かしい戦歴を持っている。その多用途性と操縦性で知られ、1970年代末から、多くの国の空軍で定番の装備となっている。
当初は昼間軽量戦闘機として開発されたF-16だが、その後は、全天候型の多用途戦闘機に進化し、成功を収めている。F-16は、その柔軟な対応力、そして高度なレーダーやアビオニクス、兵器システムの搭載をはじめとする長年にわたる幅広い機能向上によって、現代の空中戦の要求に応える、強力な戦闘機としての地位を築いた。
F-16は、マッハ2(時速2448キロ)の速度で飛び、最高で高度5万フィートまで運用が可能だ。戦闘行動半径は、内蔵燃料タンクを使用した場合は約550キロ。さらに外部燃料タンクを追加した場合の最大航続距離は約3220キロを超える。
F-16には、AN/APG-66のような航空機用の高度なレーダーシステムも搭載されており、約96キロ以上の距離にわたって、空域と地上、両方の標的を追跡できる。また、ソビエトのMiG-29やSu-57と比べるとサイズが大きく多様な兵器を搭載できる。
今回供与されるF-16は、旧ソ連製で老朽化が著しいウクライナの航空機を置き換えることになる。
支援インフラが必須
一方で、アメリカ会計検査院による2023年の報告書では、F-16を「空軍機の中でもメンテナンスが最も難しい機種の1つ」と位置付けている。この事実から、元米海兵隊大佐で、戦略国際問題研究所(CSIS)安全保障プログラムの上級顧問を務めるマーク・カンシアンは、ウクライナ軍が実際にこの戦闘機を運用するのは、かなり難しい可能性があると指摘する。
「F-16がその威力を発揮するためには、ウクライナ軍は大々的な支援・輸送インフラを構築し、維持する必要がある」と、カンシアンは本誌に語った。「これには、約9カ月を要するパイロットの訓練に加えて、メンテナンス、燃料補給、弾薬供給のためのシステム構築が含まれる」
「即座に戦局を変えるゲームチェンジャーにはならないだろう」と、カンシアンは付け加えた。
(翻訳:ガリレオ)
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