夫と50人の他の加害者を訴えた裁判で、あえて顔を出して証言するジゼル・エリコット(南フランスのアビニョン、11月29日) ZZIIGG via REUTERS

<鎮静剤を盛られ、意識を失っている間にレイプされ続けた妻はあえて実名と顔を出し、長年にわたる夫の異常な犯行を告発>

異様で卑劣極まりない集団レイプ事件で、被害者の夫をはじめ多数の被告人にどんな裁きが下されるか、フランス中が固唾を飲んで見守っている。

ドミニク・ペリコは長年にわたり、日常的に薬を盛って妻のジゼル・ペリコの意識を失わせ、自身がレイプするばかりか、ネットで集めた何十人もの見ず知らずの男たちにレイプさせていた。

おぞましいことに、主犯のペリコがネット上で募集をかけると、共犯者は簡単に集まった。多くはまともな仕事に就き、大半は妻子持ちで、年齢層は20代から70代まで。フランス社会の上から下までさまざまな階層に属している。

ペリコも含め、全部で50人の男たちが普通のレイプより刑が思い加重レイプとレイプ未遂の罪に問われ、別の1人は加重性的暴行の罪に問われている。

法廷ではペリコが犯行の模様を撮影した動画の一部も流され、フランス中を震撼させた。

3カ月に及んだ審理では、罪状、証拠、被告人と弁護団の背景などが詳細にわたって検証され、その間にペリコ元夫妻はいずれも72歳の誕生日を迎えた。

被害者を薬物で無抵抗にさせるなど、卑劣な手段による性暴力事件は後を絶たないが、「隙を見せた」などとして被害者を責め、加害者を容認するような「レイプ文化」はフランスでもまかりとおっている。

この裁判をきっかけにこううした風潮が大きく変わる可能性があり、性暴力に反対する人たちは加害者に対する厳しい処罰を求めている。

警察はドミニク・ペリコのパソコンを押収し、2万点を超える画像と動画を発見した。それらは「虐待」「彼女を犯した男たち」「ひとりぼっちの夜」といったタイトルのフォルダに収められていた。

検察は証拠十分と見て、ドミニク・ペリコとその歪んだ犯行に関わった男たちを起訴した。性犯罪では被害者が泣き寝入りするか、証拠不十分で立件されないケースが多いが、今回は犯行の一部始終を収めた映像が動かぬ証拠となった。

あえて実名を出し、顔を出して裁判に臨んだジゼル・ペリコは弁護人チームと共に、公開裁判の場に衝撃的な動画などの証拠が提出されるようあえて求めた。

一部の被告人は、彼女は眠っている振りをしていただけで、犯されることを望んでいたと証言したが、動画を見れば、それが事実でないことは一目瞭然だった。

証言台に上がったドミニク・ペリコは、妻の食べ物や飲み物に鎮静剤を混ぜ、何時間も意識を失わせて、犯行に及んだことを認めた。警察は捜査を通じて、彼が大量のトランキライザーの錠剤とバイアグラを処方されていたことを示す医療記録を入手していた。

ペリコは警察の取り調べで、2011年に退職してパリを離れる前から妻に薬を飲ませていたこと、妻と共に移り住んだプロバンス地方の小さな町マザンの家に男たちを招き入れ、夫婦の寝室で妻を襲わせたことを認めた。

警察は動画で72人が犯行に関与したと結論づけたが、身元を特定できない男たちもいた。ペリコは彼らに相手に気づかれずに薬を飲ませる方法を教えただけでなく、求められればトランキライザーも分け与えた。

ペリコをはじめ被告の一部はレイプしたことを認めたが、動画の証拠を突きつけられても、否認をとおした被告もいる。この事件をきっかけに、フランスでは性犯罪を取り締まる法律を改正し、明白な合意のない性行為は全てレイプとすべきだとの議論が巻き起こった。

「彼らは私をボロ人形かゴミ袋のように扱った」と、ジゼルは法廷で証言した。

ボブカットと丸いサングラスがトレードマークのジゼルのイラストは性暴力を告発する運動のポスターなどに使われ、裁判中には彼女に触発された多くの女性たちが裁判所前に結集した。

女性たちは「恥じるべきは加害者の側だ!」「ジゼル、私たちはあなたの味方!」といったスローガンを叫び、法廷入りする被告人たちに「あなた方の顔は忘れない」「恥を知れ」などと厳しいセリフを浴びせた。

検察はドミニク・ペリコに懲役20年を求刑していて、遅くとも20日には判決と量刑の言い渡しが行われる予定だ。

【画像】休暇中のペリコ夫妻

Channel4/YouTube

【動画】ジゼルの勇気が人々を奮い立たせた

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