まさかこの再燃を指しているのか?── チェルノブイリ事故による放射能汚染範囲を示した地図(4月23日、キーウのウクライナ国立チェルノブイリ博物館) Photo by Maxym Marusenko/NurPhoto

<「24時間以内」の和平を公約に掲げたトランプの和平案もロシアは拒絶するだろう。ロシアは「世界の未来」「長期的な平和」を見据えている、とこの有力者は言う>

仮にロシアがウクライナに対して核兵器を発射したなら、人が立ち入れない「放射能汚染区域」が生まれ、これが紛争を終わらせるきっかけになる----ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に近い人物がこのような持論を展開したと、英フィナンシャル・タイムズ紙が伝えた。

この発言をしたロシアの新興財閥(オリガルヒ)、コンスタンチン・マロフェーエフ(50)は同紙に対し、「核戦争の瀬戸際にある」世界の状況について語った。

それによればプーチンは、次期アメリカ大統領ドナルド・トランプが提案するウクライナ和平案を拒否する可能性が高く、トランプが紛争を終わらせることができるのは、ジョー・バイデン大統領が下したロシア領内への長距離ミサイル使用許可を取り消した場合だけだという。

マロフェーエフは、ロシアが戦術核兵器を発射するシナリオについて触れ、こう述べた。「我々が生きているうちには何者も立ち入らないような放射能汚染区域が生まれるだろう。そして、この戦争は終わる」

マロフェーエフが可能性として言及した「放射線管理区域」は、チェルノブイリ原子力発電所を取り巻く汚染区域を思わせる。旧ソ連時代のウクライナにあった同原発で1986年に起きた爆発事故で発生した。

この原発事故ののち、約2600平方キロにおよぶ地域が「立ち入り禁止区域」に指定されて隔離された。この区域は今でも、世界で最も放射線量が高い地域の一つとなっている。

チェルノブイリ近くの村には一部の生存者が暮らしているが、主として野生動物が周辺を占拠するようになっている。

この区域に再び人が住めるようになるまでには、3000年〜2万年かかると専門家はかつて予測した。

マロフェーエフの予測は、根拠のないものではない。プーチンは11月19日、核兵器使用のハードルを下げるよう改定された核ドクトリンに署名して発効させている。また、ロシアは領土内への攻撃に反撃するとの声明を出している。

マロフェーエフはさらに、トランプが任命したウクライナ担当特使キース・ケロッグとの和平交渉が成功するためには、交渉の内容が、ウクライナの未来のみに焦点を合わせるのではなく、「ヨーロッパ、そして世界の未来」についてのものである必要があると指摘した。

トランプは11月27日、退役陸軍中将であるケロッグを、ウクライナおよびロシア担当の特使として指名し、ケロッグの「軍と実業界における際だったキャリア」を称賛した。ケロッグは、ウクライナとロシアの和平交渉で重要な役割を担うことになるとみられる。

一方、マロフェーエフは、トランプが中東での戦争、ロシアと中国の同盟関係、そして、ウクライナにおけるロシア政府の権益についても議題としない限り、ロシアが和平交渉を真剣で永続的なものとみなすことはないと述べた。

ウクライナとの戦争でロシアが望む結末については、マロフェーエフは以下のように表現した。「我々は長期的な平和を求めている----グローバルな秩序に関する何らか形での大筋合意だ」

「トランプは歴史に名を残したいと考えていて、もすぐ80歳になる。彼はおじいさんだ。プーチンも、もはや50歳ではない。(和平は)この2人が私たちに残すレガシーになるだろう」

ロシア・メディア界の大物である実業家マロフェーエフは、ロシアとギリシャで複数のテレビネットワークを経営している。また、クレムリンで公職にあるわけではないが、ロシアの政策決定に影響を及ぼしてきた。

マロフェーエフは、ロシアがクリミアを併合した2014年以降、アメリカの制裁対象となってきた。「ウクライナに脅威を与え、ドネツク州の親ロ派地域に金銭的支援を与えている」ことが理由だ。米司法省からも2022年に起訴されている。大規模なサイバー犯罪捜査に関連したアメリカ政府の対ロシア制裁に違反したためだ。
(翻訳:ガリレオ)

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