ウクライナ軍は、バイデン米政権からロシア領内への攻撃に使用する許可を得た米製長距離ミサイル「ATACMS」で、11月19日、ロシア西部のブリャンスク州の弾薬補給地点を攻撃した。同軍は23日にも、「ATACMS」で、クルスク州北西部のロタレフカの防空システムを破壊。25日には、クルスク州のハリノ空軍基地を攻撃した。ウクライナ軍は20日、英供与の長距離巡航ミサイル「ストームシャドー」を、ロシア国内の標的に向けて初めて発射した。クルスク州の西部マリノのロシア軍司令部を攻撃し、北朝鮮の複数の将校が死亡したとされる。
ロシア軍は11月26日、前夜から未明にかけて、過去最大規模の空爆となる、計188機の無人機を発射し、ウクライナ各地を攻撃した。また、ロシア軍は、ウクライナ各地で27日から28日までに、電力インフラなどを標的としたミサイル攻撃を実施し、各地で大規模な停電が発生した。米AP通信によると、ウクライナ全土で約100万世帯が停電した。プーチン大統領は、「米製の長距離ミサイル、ATACMSを使用したロシア領内への攻撃に対する報復である」と語り、今後の攻撃次第では、新型の中距離弾道ミサイル「オレシュニク」を使用して、首都キーウの政権中枢を狙う可能性があることを示唆した。11月21日にロシアは、新型の中距離弾道ミサイル「オレシュニク」で、ウクライナ東部のドニプロにある工場を攻撃した。ロシアのアストラハン州から発射され、着弾したドニプロまでは約800キロで、ウクライナ側は当初、大陸間弾道ミサイル「ICBM」と分析していた。
プーチン大統領は21日に、「オレシュニク」について言及し、「新しい中距離弾道ミサイルを使用した、マッハ10、秒速2.5〜3キロの速度で標的を攻撃する。米国が欧州で構築しているミサイル防衛システムは、ミサイルを迎撃することは不可能だ」と語った。また、プーチン大統領は28日、「弾頭の温度は摂氏4000度に達する。地下深くに設置された厳重な防護施設でさえも攻撃ができる。一度に大量使用されれば その威力は核兵器にも匹敵する、量産はすでに始まっている」と威嚇していた。
トランプ次期米大統領は11月27日、1期目にペンス副大統領の国家安全保障担当顧問などを務めた陸軍退役中将のキース・ケロッグ氏(80)を、新設となるウクライナ・ロシア担当特使に指名すると発表した。ケロッグ氏は長年のアドバイザーとして、ウクライナ戦争の早期終結を目指すトランプ氏の目標を支持してきた。ケロッグ氏がまとめたウクライナ和平案には、▽ウクライナに和平協議に応じなければ、米国の武器提供を停止、▽ロシア側にも交渉を拒否すれば、ウクライナへの米国の支援を強化すると警告、▽ウクライナのNATO加盟を長期間先送りにする約束と引き換えにロシアに和平交渉を迫る、▽現在の戦線に基づいて戦闘を停止、と示されている。
一方で、ケロッグ氏は自身の研究論文の中で、「2024年4月に議会が承認した610億ドルの援助パッケージとEUからの軍事援助は、ウクライナが現在の戦線を維持するのに役立つかもしれないが、それは、さらに何千人ものウクライナ兵士の命と数十億ドルの軍事援助を犠牲にすることになる。これらの高額な費用を支払ってもウクライナがロシアから領土を奪還できる見込みはほとんどない」との見解を出している。
★ゲスト:渡部悦和(元陸自東部方面総監)、駒木明義(朝日新聞論説委員)
★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)
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