中国で国家公務員への就職人気が高まっている。11月30日、12月1日に実施された2025年採用の筆記試験の出願者数は、341・6万人(前年比約38万人増)と過去最多を更新。一部の職種の競争倍率は1万6000倍に達した。国内経済が低迷し、雇用環境の改善も見通せない中、若者の安定志向が鮮明になっている。
1日朝、北京市内の試験会場にはダウンなど厚手の上着を着込んだ受験者らが次々と現れ、長蛇の列を作った。開門までノートを片手に勉強する姿もあった。
中国の中央機関とその直属機関で働く公務員を採用する試験は「国考」と呼ばれる。その激しい競争から、清朝時代まで続いた高級官僚登用試験制度になぞらえ現代版「科挙」とも称される。
公務員や国有企業の従業員は「鉄飯碗(割れない茶わん)」とも言われ、新型コロナウイルスが流行した20年以降、急速に人気の就職先となっている。出願者数も20年採用の143・7万人から25年採用は341・6万人と右肩上がりで増加している。
25年採用の募集人員は3・97万人と7年連続で拡大されたが、平均倍率は86倍と、こちらも20年以降で最高の競争倍率となっている。
また中国メディアによると、中国共産党中央統一戦線工作部管理下の団体「中華職業教育社」には募集枠1人に1万6702人が応募し、競争倍率が1万6000倍となった。原因は不明だが、大学での専攻や党員資格の有無などの条件を付けない職種に応募者が集まり、極端に高倍率となる傾向があるという。
公務員人気の背景には、長引く不動産不況に伴う国内経済の停滞がある。若者の雇用環境は悪化し、10月の若年層(16~24歳)の失業率も17・1%と高止まりしたままだ。また国有企業などの公的部門の育成を優先する習近平指導部の「国進民退」政策や、ハイテク分野や教育産業などへの規制強化も公務員人気に拍車をかけている模様だ。
北京市内の大学院に通う男性(24)は「民間企業も採用を絞っており厳しいが、公務員になるのはさらに難しい」とため息をつく。【北京・岡崎英遠】
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