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<作業員が翼から部品を取り外したのに機内では安全ビデオの再生がスタート──「まさかあり得ない」「このままではみんな死んでしまう」と思った女性が取った「勇敢」な行動とは?>

その光景を見た乗客は凍り付いた。離陸直前の旅客機の機体から部品が取り外されているのだ。

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ダラス在住のテイラー・ヒルトン(26)は、ダラス・フォートワース国際空港発カリフォルニア州オレンジ郡のジョン・ウェイン空港行きのアメリカン航空便に搭乗。出発間際になって、作業員が翼から部品を取り外して車で走り去るのに気付いた。

本誌の取材に応じたヒルトンは、「部品が欠けたまま離陸するなんて、まさかあり得ないと最初は思った」と振り返る。「それから機内安全のデモが始まり『間もなく離陸する』と客室乗務員が告げたので私はすぐさま不安を口にした」

ヒルトンがTikTokに投稿した動画には、もう離陸するのかと客室乗務員に尋ね、機体の部品が欠けていると伝える自身の姿が映っている。そこに「このままではみんな死んでしまうと思った」という字幕がかぶる。

ヒルトンは、翼に取り付けられていた部品を空港作業員が外して持ち去る映像も公開した。

「操縦士は乗客に、何かが『緩んでいる』ので整備士が修理中と説明していた」「私はきっとあそこでネジを締めているのだと思った。ところが機体の部品が丸ごと外されたので、私はおかしいと思って安全デモの間に客室乗務員に知らせた」とヒルトンは続ける。

「私が不安を告げた後、客室乗務員は安全デモを中止した。それから私の動画を操縦士に見せたいのでスマホを貸してほしいと言い、どうなっているのか調べると言った」

「数分後、操縦士の機内放送があった。何も心配はなく、取り外したのは空気力学用の部品で飛行には必要ないという説明だった」

航空・環境を専門とするグランフィールド大学のガイ・グラットン准教授は本誌の取材に対し、「このように部品の欠陥や欠落があるフライトを速やかに承認(または禁止を確認)するシステム」があると解説する。

「今回のケースはそれだったと思う。アメリカン航空の運航部門が航空機のメーカーから、フェアリングを外して飛行する許可を得ていたのだろう」

「これを見ると、そうした許可が出ることは不合理とは思えない。あれは非構造的な空気力学フェアリングで、もし便宜上、外したまま1回飛行する必要があったとしても、その飛行が危険にさらされるとは思えない。燃料消費は若干増えるだろうが」

アメリカ国内便は年間数百万人が利用する。データ調査会社のスタティスタによると、2023年は8億1900万人以上の乗客が国内便に搭乗した。

ヒルトンの動画を見たユーザーは、自分がその場にいたらどうするだろうと語り合っている。

「あなたの言ったことをもし私が耳にしていたら、きっと行き先のことを考えてたちまちパニックになっていた」とあるユーザーは言い、別のユーザーは「いいや、飛行機丸ごとの料金を払っているんだ。欠落した部品の払い戻しを求める」と書き込んでいる。

「自分だったらためらうあまり声を上げられず、きっとそのまま座り込んでいた」というコメントもあった。

本誌はアメリカン航空にメールでコメントを求めている。

(翻訳:鈴木聖子)

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