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中国・広東省珠海市で11日、車が暴走し、35人が死亡した事件。多くの人が献花に訪れましたが、程なく花は片付けられてしまいました。習近平主席が異例の重要指示を出すなど、当局は社会の動揺を抑えようと神経をとがらせています。

■ウォーキング中の市民ら犠牲

車が暴走したのは市内にある競技場の周囲で、取材によると、暴走した距離は少なくとも500メートル。この時“徒歩隊”と呼ばれるウォーキングを楽しむ団体や、ランニングなどをしている多くの市民がいました。目撃者は“徒歩隊”が大きな音で音楽を流していたため、車に気付かなかったのではないかと話しています。

そこに乗用車が無理やり進入し、次々と人をはねました。地元警察の発表では死者35人、43人がけがをしたということです。車を運転していたのは62歳の男。持っていた刃物で自殺を図り、意識不明の重体だということです。

献花した人                                    「非常に驚いた。受け入れられない。向かい側に住んでいる。事件の情報が発表されていなかったので、同僚に話を聞いたが信じられなかった」
「被害者たちは無実で関係のない人たち。これほど影響のあることをやらかして、どんな意味がある?悪名は長く後世に残される」

■相次ぐ“無差別”事件 背景は

中国では今年に入り、無差別に人が襲われる事件が起きています。

2月には重慶市の繁華街で、車が暴走。6月には蘇州市で、日本人親子ら3人が刃物を持った中国人の男に襲われる事件が発生。

9月には深セン市で、日本人学校の男子児童が通学中に男に刺され死亡。

9月末には上海市のスーパーで、男が無差別に切り付ける事件が発生し、15人が負傷し3人が死亡。

10月には広州市で、刃物を持った男に路上で襲われ、3人がけがをするなど、2件起きています。

中国の人が今感じていることは…。

中国人男性                                       「非人道的です。なぜ関係ない人に…。社会への報復かな。不満があったのでは」

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■警察発表で“消えた文言”

■警察発表で“消えた文言”

李志善記者                                    「中国の検索エンジンを使って『社会への報復』と検索すると、今回の珠海の事件の直後から急激に検索量が増えていて、社会の関心の高さがうかがえます」

また、今回の暴走事件では、動機について警察の発表が変わりました。

李志善記者                                    「事件についての警察の発表文です。最初のものと今のものを見比べると、当初は容疑者が離婚後の財産分与のトラブルで裁判を申し立て、その結果に不服だったと書かれています。しかし今のものでは、その部分がすっぽりと抜けてしまっています」

「裁判所への不満」という部分が消えていました。ただ、男は意識不明の状態です。変更の理由は発表されていません。動機は個人的な理由によるもの、という意図があるのでしょうか。

そして、事件現場でも変化が…。

「午前中にはあったんですけど献花がなくなっています。午後3時なんですけども、献花されていた場所には花がありません。会場周辺は午前中よりもかなり警備が厳しくなっています」

中国政府は、異例の対応を行いました。

CCTVキャスター                                  「事件発生後、習近平国家主席は非常に注目し重要な指示を出した。重要指示をもとに中央(政府)はすでにチームを派遣し、処理業務を指導するため現地に駆け付けさせた」

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■習氏の“重要指示”その意図は?

■習氏の“重要指示”その意図は?

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中国で市民が犠牲になる殺傷事件が相次ぐなかで起きた今回の事件では、習近平国家主席自ら「リスク管理を強化し、極端な事件の発生を厳しく防ぐ」などとする“重要指示”を出しています。背景には何があったのでしょうか。

現代中国に詳しい、東京大学大学院の阿古智子教授によると“重要指示”は異例だということです。

東京大学大学院 阿古智子教授                          「今回は人目の多い都市部で発生し、SNSで拡散され、政府はうやむやにできず“仕方なく”指示を出したのではないか。また、容疑者の動機が早々と公表されたのは、政権側に“市民の疑いや混乱”を収める狙いがあったのではないか」

(Q.なぜ混乱を恐れるのでしょうか)

東京大学大学院 阿古智子教授                            「そもそも習近平政権の最重要課題は『社会の安定と維持』だが、国が安全を守れないとなると、習近平体制を脅かす事態につながりかねない」

(Q.中国は自由にモノを言えない一方で、治安は一定程度、安定している印象でしたが)

東京大学大学院 阿古智子教授                           「習近平政権は監視カメラを設置して顔認証し、犯罪発生リスクを減らすことで、社会の安定維持を図ってきた。一方で、中国では経済不況が続き、弱い立場の人がさらに追い詰められる事態になっている。しかし、声を上げようにも言論統制され、政府も聞こうとしない。抑圧され、増大した“憎しみ”“怒り”その『はけ口』が弱者=市民に向かっている。今後も無差別事件は連鎖する恐れがある」

阿古教授は、30年以上中国を見てきた研究者として、こう話します。

東京大学大学院 阿古智子教授                               「実感として、心の問題を抱える人や自殺者が増えていると感じる。今の中国では、社会の“閉塞感”が広がっているのでは」 この記事の写真を見る
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