三重県名張市内で出産ができる医療機関が、来年1月にゼロになることがわかった。市内で唯一出産に対応する医療機関が、少子化による分娩(ぶんべん)数の減少などで分娩業務を取りやめるためで、10日の市議会で議員が市の対応をただした。
取りやめるのは武田産婦人科(同市鴻之台1番町)。
病院によると、市出身の武田守弘院長が1993年に開院し、1万人を超す分娩に対応してきた。少子化による分娩数の減少や、24時間の対応を求められる中での院長の体調面などを考慮し、「苦渋の決断」をしたという。婦人科などの診療は続ける。
鳥羽・志摩・亀山もゼロ 全国では24年で半減
同市の出生数は2000年ごろまでは緩やかに増えていたが、02年の741人をピークに23年には過去最少の367人まで減っている。
10日の市議会では自由クラブと日本共産党の議員2人が相次ぎ、今後の市の対応を質問。北川裕之市長は1年近く病院側と協議してきたことを明かし、「『産み育てるにやさしいまち』を掲げる市として、大きなダメージ。庁内あげて今後の対策を検討している」「市内で分娩できる環境について短期、中長期で対策をまとめ、市民に提示したい」と答えた。
厚生労働省によると、分娩を扱う全国の診療所・病院数は1996年の3991施設から20年に1945施設とほぼ半減した。伊賀地域の医療圏ではほかに2院が分娩を実施している。県によると、県内で分娩に対応する医療機関がない市は鳥羽、志摩、亀山という。(小西孝司)
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