北海道恵庭市の牧場で虐待されたとして、長年住み込みで働いていた知的障害のある男性3人が経営者家族と恵庭市を相手取り、計約9400万円の損害賠償を求めた訴訟をめぐり、札幌地裁は、傍聴者向けの手話通訳を裁判所の予算では行わないことを決めた。

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 原告側は、最高裁が7月、旧優生保護法を違憲とした判決の際に裁判所の予算で初めて負担。具体的な事情に応じて必要があると判断すれば、各地の裁判所でも負担する可能性があるとしたことを受け、原告側は8月8日に公費負担を地裁に要請していた。現在は、札幌市の手話通訳者派遣事業を利用している。

 地裁は28日に「最高裁判決と同じような事情があるとはいえない」と原告側に口頭で説明したという。

 地裁は、札幌市の手話通訳者を傍聴席の定員に含めないことや、聴覚障害者が手話を確認できる席を確保することなどは引き続き認め、さらなる合理的配慮について要望があれば検討するとしている。

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 この訴訟の第5回口頭弁論が4日、札幌地裁(布施雄士裁判長)であり、訴えに対して恵庭市側が改めて反論した。

 原告側は、市が虐待の可能性を把握しながら、元市議会議長の牧場経営者(故人)に忖度(そんたく)し、隠蔽(いんぺい)したと主張している。

 市側は、虐待の疑いを認識していなかったとし、対応の違法性を改めて否定した。原告側が証拠とする障害者支援事業所の記録については、市に非協力的な事業所が「(虐待や忖度を)邪推し、市をあえておとしめようとした」と主張した。次回の口頭弁論は11月18日の予定。(上保晃平)

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