日本人女性の9人に1人がかかる乳がん。治癒の鍵は、早期発見だ。乳がんを見つける代表的な検査に、マンモグラフィー(マンモ)と超音波(エコー)があるが、加えて近年、「痛くない乳がん検査」が注目されているという。どんな検査なのか、実際に受けてみた。 (長田真由美)

痛くない乳がん検査を受ける記者。うつぶせになり、足側から機械に入っていく=愛知県安城市の安城更生病院で

◆Tシャツ着たまま

 「痛くない乳がん検査」とは、MRIを使ったもの。「無痛MRI乳がん検診(ドゥイブスサーチ)」といわれる。  記者(45)は6月中旬、愛知県安城市の安城更生病院で受けた。Tシャツのまま検査でき、2021年12月に専用の機器を導入後、月に40人ほどが受診しているという。副院長で保健事業部長の竹内真実子さんは、「従来の検診で痛い思いをして、もう受けたくないという女性が、『痛くないなら』と検査してくれているようだ」と話す。  確かに、記者もあのマンモで痛みを感じたことがある。マンモは、乳房専用のエックス線装置を使って、乳房を板で圧迫し、薄く広げて撮影する。月経前などにホルモンバランスが崩れて乳房に張りや痛みがある時などは、激痛が走ることもあるという。エコーは痛みがないが、マンモと同様、Tシャツなどは着用できず、乳房を見られる恥ずかしさがある。

◆被ばくの心配なし

 いざ、MRI室へ。診療放射線技師から説明を受けた後、乳房の部分に穴が開いたベッドにうつぶせになるだけ。電磁波を使って撮影するので、マンモと違って被ばくの心配もない。大きな機械音が鳴るので、音楽が流れるヘッドホンが渡された。  いよいよ検査開始。寝ているだけなので気が楽だ。ベッドに横たわった状態で、筒状の機械が体の内部を撮影する。ただ想定外だったのが、記者自身が1年前にエレベーターに閉じ込められ、閉所が苦手になっていたこと。検査は15分間。密閉状態ではないことを、事前にしっかり確認しておけばもっとリラックスして受けられたと思った。  無痛MRI乳がん検診は痛くないだけでなく、診断精度が高いのも特徴だ。開発した東海大工学部教授の高原太郎さんによると、がんが陽性と判定されるのは、千人あたり約20人。同じ患者で比べたデータではないので単純に比較はできないが、マンモは3人、エコーと併用しても5人とされる。また、判定後に実際にがんと判明した割合を示す陽性的中率は、無痛MRIの場合、マンモの数倍だった。  日本人女性は、乳房の中の乳腺の割合が高い「高濃度乳房」の人が多く、マンモでは撮影した画像が白っぽく写る。がんも同じように白く写るので、見分けがつきにくいというが、エコーやMRIでは影響を受けないという。  自治体が行う乳がん検診はマンモが中心。費用は自治体によって異なり、無料から3千円程度。無痛MRIは自由診療なので、検査費用は2万円前後かかるが、専用の機器が開発されてからの6年で、導入する医療機関は増えているという。今は全国約70施設で採用され、累計3万5千人以上が検査している。

◆受診のきっかけに

 国の指針では、40歳から2年に1度、マンモ検査を受けることを推奨しているが、実際の受診率は47%。高原さんは「約半数が検診を受けていない」とし、「従来の検診を否定するわけではない。『痛い』『恥ずかしい』と、検診を敬遠していた女性たちの受け皿になってほしい」と力を込める。


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